スカンク

芯のところで理解できないのだ、いや、理解はできるが納得したくないのだ。くだらないと感じる。くだらないものにくだらないと言うこと、嫌なことに嫌だと言うこと、それを否定しなければ存在できない人間関係など、俺には必要ないのだと、思考、焦燥。俺にとって、そもそもほとんどのものは余分であるのに、君はそれを必要なものだと思っている。俺が物を溜め込むのは捨てたくないからではなく、手に入れたかったからではなく、捨てないでもいいものだったからだ。本当に欲しかったものは数少なく、それが手に入らないために、そうだ、予備だ。君は僕の事を勘違いしているんじゃないか、その言葉が喉で止まった瞬間から、俺はもう諦めてしまったのだ。分かり合うことは放棄され、つながりは偽者になった。最初から偽者だったんじゃないか、ってあの子は言う。俺だってそう思うさ、だけれど、本当だって信じたかったんだから。でもさ、だから、うそさ。
余分を当然だと思っているのが理解できない。何故俺が君のために何かしなかっただけで、俺が罵倒されなければならないのだ。俺は、君に全てを捧げるつもりなんて、毛頭ないのに。人を悪く思うことを覚えてから、俺は不遜になった。人と話すことを覚えてから、覚えただけでそれはちっとも完成しないのだけれど、俺は絶望することが多くなった。世界はそれほど大きくない。きっとこのまま暮らしているだけでは、広がりはしないのだ。鼓動が大きくなるたびに、cherryを。憤っている。
桜の季節になる、けれども、俺は桜など見たくはないのだ、今の俺はぼんやり、ぼんやり考えている。こんな気持ちだって、桜を見れば吹き飛んでしまう。あの桃色の情動よ、衝動よ。少し立ち、葉桜の季節の、あの混じりけのある生命よ。


過去を笑い、日が暮れる。

 遅れてやってきた髭の男に、彼女は迷わずキスをした。
 瞬間、僕は顔に血液がいきわたるのを感じた。耳の奥に高い周波数、心臓のBPMは二十だか三十だか上がった。
 悔しい、と感じた。
 恥ずかしい、と感じた。
 難しい言葉ででも、普段ならばいくらでも例えてやれるのに、今の僕にはこの感情を単純に、それはひどく単調に、飲み込んでやることしかできはしなかった。

今とまるっきり違う。それは良いことなのだと、あの人は言うだろう。