妄言流星群

馬鹿なことをやっている自覚はあるが、それを他の誰にも笑われたくない。筋を通さねばならぬ。傾き、数寄、無頼を気取っても、俺は自己に押しつぶされていくだけであった。敷かれたレールの終点さえも、まっすぐ行くことさえも俺にはできなかった。そんな男にとって、ぶらり、ゆらり、一人旅、それさえも自棄だったというのだろうか。
花火が消える前に覚悟を決めるべきであった。後悔など糞の役にも立たぬ。無理に止まって、そこで罵倒されることに慣れてしまいたかった僕は、そんな逃げさえも耐えられずに、僕は泣いた。それも単なる停滞であった。停滞に耐えかねて、停滞の中で停滞し、その中でも、その中でも、その中でも、僕は停滞した。そうして、足から根が生え、肩から葉っぱが出たころに、僕は吐いた。隣で吐く僕を尻目に、流星群を見に行こうよ、と君は言った。僕は胃液を抑えながら、空を見上げて、ここでも見える、だなんて態度で伝えようとした。結局、君は行ってしまったし、こんなに明るい場所で流星群が見えるべくもなかった。少しだって美しいものが欲しかったし、少しだって綺麗なことを言いたかった。それを欲望といわずして、何を欲望と呼ぶのか、などとわけのわからぬたわ言をわめく、幾ばくかの人々は雨にうたれ、そうして僕は空を見るのをやめてしまった。残ったのは吐瀉物だけであった。ああ、セックスのせいで、脳がとけてしまったんだ。賢い僕はそう思った。cherryを根元まで呑んで、苦味に顔をしかめながら、僕は本当にそう思った。彼女は帰ってこなかった。
どうせ流星群の夜を忘れてしまっていたのだろう、そんなことを、僕は言った。彼女は、あンたの吐きそうな顔だけ覚えてるよ、なんて返した。本当に吐いてたんだよ、君が出かける前にさ、それも忘れた? 吐いたか吐いてないか、どうだっていいじゃない。あンたはあの日とんでもなく荒れてたし、あたしはそんなあンたがびっくりするくらい嫌だった。だから、そんなことは些細なこと。きっと、そんな気持ちを覚えているうちは、些細なことだよ。僕は、家に帰って、もう一度吐いた。忘れぬように。そういえば、彼女とは久方ぶりにあったのだった。


飯を食わねばならぬ。健全なる精神を、ぎりぎりまで保つために。新聞を読む時間はない、テレビを見る時間はない、映画を見る時間はない、本を読む時間はない、くだらない妄言に耳を貸す時間はない。