強い洋酒を飲んで、酔っ払いたい気分だ。

ずっとこのままでいた。周到に生きることでもともと短かった爪は失われ、もともと鋭くなかった牙は折れ、ヤニによごれた。馴染めないままに転がるべきであった。打ち上げられた魚のように、転がるべきであった。僕は馴染んだ。エラは退化し、空気を吸えるようになった。そうして、僕は鬱屈した。順応する前に、適応する前に、適合する前に、気づくべきであった。奴らは俺の事をダメにしてしまうに違いない。決定的に戻れなくなるまで、確定的に見えなくなるまで。丸っきり興味がないという事、それを考えてしまったとて、誰もそれを教えてはくれないのだ。
身内にだけ向けられる声に、興味はないのであった。僕はそれを叫んでいた。そんなものくだらない、馬鹿げている、それで安心するなど、あまりにも矮小だ、なんて。しかし、俺が今まで求めていたのは興味のないはずの、内輪びいき、ただそれであった。何も手に入らないままに、それにだけ気づいてしまった。寒気がするほど歪に捻じ曲がり、屈折している。きっとすべてを手に入れた後も、臆病な僕が能天気な彼女を刺した後も、きっとまたこの感覚は。新しいおもちゃを手に入れる度に虚しくなるのだ。受動的になるたびに衰えていくのだ。快楽を、天国と見まごうばかりの快楽の園を、俺は手に入れたい。それなのに、そこはきっと、偽善の園に違いないのだ。それに気づいてしまう直前まで、俺は快楽を求め続けねばならぬ。そうでなければ、今まで求めてきたものはなんだったというのだ?


鬱になってしまった、とあの子はいとも簡単に言う。何錠も虹色で、それなのに、もう一錠、これだけなら大丈夫から、なんていとも簡単に言う。アンタなんかに興味はないぜ、弱い人間は悲しいネ、きっとアイツなら、そんな事をいとも簡単に言うだろう。アイツはあの子が死んだって、あの子のために泣くくらいだからね。君の話を全部聞いてあげる、君の涙が悲しいから、きっとあの野郎ならそれくらいキザな台詞をいとも簡単に吐いてみせる。あの野郎はあの子が死んだって、自分のために泣くくらいだから。あの子は誰にも迷惑をかけたくないなんて言う代わりに、たくさん粒を飲む権利を得たのだと思っている。だから、僕はあの子に自分を屑だなんて言う権利を認めたくないのだ。