矛盾皇帝

僕はきっとこのままでいい、なんて思わなければ、僕は生きてはいけないのだ。彼女は、あたしはこのままじゃいけない、なんて思わなければ、あたしは生きていかれないんだ、なんて言った。生きて、イカレて、そこからはじまるのだから、消えてしまうことの無いようにしなければ。僕は笑う。必死に笑う。もし僕が君とこれから一生つながっていく気ならば、僕はこんな糞ッタレた夜から抜け出さなけりゃいけない。首の生えた夜が君を殺しにくるよ、金切り声上げながら、さ。恋愛なんて、色恋沙汰なんて、すべて作り物だ、繋ぎ目の見えた怪獣だ。頭の悪い彼女は、セックスを続けながら呟いた、かっこいいなんて言われると、馬鹿じゃないのかって思うね、頭沸いてんじゃないの、って。本能は嘘じゃないけれど、かっこいいなんて、ね、馬鹿じゃないの? このまンまじゃ、きっとあの世に行っても、かっこいい、なんて言われるのだと思うの、それもくだらないな、ってサ。彼女は、彼女が昔やっていたバンドの曲を口ずさむ。

狂っちまったあンたに教えてあげるよ
あンた以外が正常で あンたばかりがおかしいのさ
狂ってない僕に教えてくれるなよ
僕以外が正常で 僕ばっかりがおかしいってことを


ロボット人間気取りなら、正常生物気取りなら、どこかへ行ってくれ。へそ曲がりの僕は責められるとつい怒ってしまうから。気がのらないときは言ってくれ、きっと僕も気がのらないからさ。