連作 酔いと負け

できたはずの熱意も暇も余らせて斜に構えてはできないでいた

 

コンテンツ消費するだけ消費して消費することすら面倒だ

 

96分の映画を今日見るか悩んで過ぎる22時半

 

この俺の時間を使う価値があるか考える時間こそ無駄である

 

名作をこれから見るぞと気合い入れあらすじを読み満足し寝る

 

気合いを入れねば消費もできぬならいっそ消費もせずに死にたい

 

このまま酔って寝てしまおうと決めて麦酒の缶を煽りつつ夏

 

明日死ぬとて今日を必死に生きることもできずに死んでいくのか!

 

今日死んでも明日死んでも変わらないならば今日だけ酔っていたいよ

 

明日の予定があることがありがたい衝動的に死なずに済んだ

 

死ぬとか死にたいとか簡単に言い簡単に死ねぬ僕の生きたさ

 

惰性で何十年も生きてきたがそれに気付かずに今在る俺

 

現実の苦しさからのボトムアップで世界が変えられるわけない

 

この息苦しさを変えることができるトップダウンのトップは誰だ?

 

俺の苦しさは俺だけのものだよ誰も俺を代表するなよ

 

酔った! ああ今日も気持ちよく酔えない! 雑念ばかり酒に溶けゆく

 

泥酔し気絶するやに寝るまでがどれほど救いなのかもしれぬ

連作 生きることについて

起きがけに生きたいとさえ思えたら生きたいことを忘らるるのに

 

歯ブラシの開くを毎朝見ている毎晩換えられずに佇む

 

2lの冷水筒に麦茶沸かす1パックでは薄いかと思う

 

袖通すカッターシャツの皺と皺忘失のアイロンのしまい場

 

鍵閉めて一歩二歩進み引き返す鍵を開けてまた閉める旭光

 

この世には俺しかいないのであれば他人の子の声聞かずに済んだ

 

電車とは電気で動く車とて怨嗟で動く気さえしている

 

何もせずと何もできずの間にて何か起こることだけを待ちつつ

 

やり過ごしやり過ごしてなおやり過ごしいつになったら向き合えるやら

 

同じ種類のコンビニの握り2つ選んでも良い俺が認める

 

日が高いなあ! 風があれば良かった暑さの中に影は落ちつつ

 

犬が往く犬の飼い主が着いて往くどこへ往っても散歩だと言う

 

夕方の少し前にある静けさを待ち望んでは憎んでもいる

 

植物のように過ごせど腹は減る葉緑素すらないからかしら

 

読み古された100円で買った新書どうにも暗くなり目が滑る

 

半額の弁当すら手に入らぬなら半額の人生受け入れる

 

部屋の空気が湿っている布団も人生も湿っているだろうか

 

寝るのだと決めていたはずなのにまた眠気と戦い勝ってしまった!

 

日本茶ティーバッグの在庫を見てきちんと生きているなと思う

 

湯が沸くのに時間がかかるのは良い湯が沸くのだけ待っていられる

 

急に思い立って風呂の湯を沸かす日本茶にでもなったつもりか?

 

思い返せばあの時もああだったなんて思い返しつ沈む湯

 

風呂の湯を抜く死ぬときもこんな気がするのかと思う29時半

どこにいるんだ

どこにいる。どこにいるんだ。
見えず歩く。脳が軋む。
揺らぐ、視界。繋ぐ、繋ぐ。
わかっている。わかっているんだ。
数年前のぼくのことなんて。すべて。

わかってしまった。わかってしまった。
わかってしまったから動けなくなった。
あの時のぼくの衝動は、ぼくの愛憎は、ぼくの、ぼくだけのこの痛みは。
取るに足らないものだったんだね?
わかってしまったんだ。

あのときのぼくはこれから何もできない。
あのときのぼくはこれから何もできない。
あのときのぼくはこれまで生きていたのに。
いなくなってしまった。

思いました、なんて可愛いことば

フェイスブック! わらう。笑わないさ。
君たち知ってる? そういうのがあるわけ。
とにかくそういうのがあるわけさ。あるわけさ、なんて可愛い言葉で、きっと僕の文章表現はやって来なかった、のか? そうでもないので続けるね。そこには色々書くことがある。僕だってその、あのその、あのそのどのこのこれそれあれどれ? 書くことがあるのだよ(ないけどね)。こどものはなしとか、そのさ、それとかそれとかね。
やーめた、らしいけど。
優しい君はわかってくれるだろう。
さておき。
つまらんことに時間を使うでもない。
写真を見た。
君がそれを喜ぶのを見た。
きっとそれは心からの祝福だろう。
僕は、あと、その、奴と奴のツレは、きっと肯定するだろう。君の心のゆらゆらと、水面が収まったら準備をはじめるとしてもね、それはさておき。
苦しいのは、過去の遺産。遺産ほどでもない。苦しいと思ったことのない。苦しいと思うことの、現実感のない。苦しくない? 苦しくないと言われたら僕は怒るよ。誰のために? 君のために。それは一番は君のために。でも、一番の一番は、僕が君を受け入れるために。
いえいえ、僕は君をずっと受け入れているから、ずっと一番なんだ。
嘘だけどね。

脳と堵と

才能と努力と、きっとぼくにはそのどちらもないと笑いながら、きっとおれにはどちらかは得られるのだと、そうやって確信していた。
いやあ、あの馬鹿どもにはわかるまい、ぼくの才能は! どだいあのクズどもには理解できまい、おれのこの努力は!
それがどうだ? それがどうだい?
何もなせず、何も積み上げることすらできない。誰も君の後ろを歩かないよ。やけにうるさい夜が言う。苦しい苦しい、と臓腑が喚いている。心臓は、文句を言わず正確に(時々早くなるが!)動いている。心は止まったままで、動かない、なんて、思っていたが、ただただ嫉妬だけが! 嫉妬! 妬み! 妬み! アハハ、そんなくだらない感情、張りぼての仮面が笑う。思想は、脳を焼きつくす。
おれという才能は、ぼくという努力は、色づけしたらいくらか、あっちとこっちとで、簡単に色分けできるはずだったのだが、きっと混ざり合った私の部分で、銀鼠色に表現される。あの子の手首の横の尖った骨のような、あの子の足の親指の、裏側の少し白くなったところのような、そんな純粋な部分で、今更に実感する。かわいらしいね?
忘れてしまった! 君の内臓の感触も。
忘れてしまった! 君の皮膚の(刃物が通る)音も。
忘れてしまった! 君の目玉の! 表面の! 舌で感じる平熱も!
怖いのは、渇望を失うことだ。
怖いのは、飢えを感じなくなることだ(それは、腹いっぱい食べられるようになったから? それとも飽食に麻痺してしまったから?)。
いつでもおれが恐れていたのは、怒りと絶望が無くなることだった。怒りと絶望はなくならないのに、それを表現する衝動が失われることだった。衝動があるのに、創作する意義が失われることだった。
本当にぼくが怖いのは、技術的な、修辞的なあれこれが稚拙になるより、私が思うすべてのことを、(それが例え性欲であっても)文字で表せなくなること。前頭葉の脱力と、性器の疲弊を肉体が感じてしまうこと。そして、誰しもから忘れ去られること。
ああ、誰よりも平穏でいたい。
ああ、誰よりも争いのない私でいたい。
ああ、だけれども、誰よりも、誰よりも、おれが苦しみ、おれが憎み、おれが絶望した、この気持ちを踏みにじって欲しくない。簡単に理解した格好をとって欲しくない。
ねえ、わかってるさ。ぼくの信じた現実など、(実際は)奴らの用意した破滅にすぎなかった。ぼくが信じた絶望を! ぼくが許した後悔を! 誰の手柄にしてなるものか!
私が、私であった軌跡を。ドロドロと、コオルタアルの流るように、焼けた臭い、陽炎、黒色の揺らぎ。これまでに、無駄にしてきた感情の行き場が、沸々とそこにある。

永遠を生きられない以上

完結させたい。
考えなければならないことが、多すぎる。それは考えなくてはならないことか? ぼくが? おれが? 考えて考えて考えて考えて考えあぐねて、考えあぐねなければいけないの?
いいよ君が考えなくても。
いいよぼくが考えなくても。
だから誰が救われるでもない。
君は君の責任感から、君は君のどうでもよい責任感から、正義を行う。
完結させたい。
誰もぼくの正義を知るでもない。
誰もきみの正義を知るでもない!
だけれどもおれは知っている。
きみの信ずる正義を。きみが生きる理由を。たったそれっぽっちの砂上の楼閣を。だいすき。矮小な、きみの矮小なプライド。存在理由。価値を頑張って頑張って理論武装した。自分が生きていることになんの意味もないって、わかっているから、何も変えられないって(変えるのが偉いって思ってるわけではないけどきみはそれにこだわっていた)、思っていたから、さ。かわいいね。だいすき。
完結させたい。


僕の話はするなよ。
僕の話はするなよ。
君らをかわいがるだけで。
僕の話はするなよ。
僕の話はするなよ。
僕の話はするなよ。
怖いんだ
僕は余裕綽々で君らに伝える。
なにを?
まだ生きてんだぜってそれだけ。
でもあなたがたは生きてなお殺そうとしているんだろう。
弱くなった。
僕は弱くなった。
純粋でいられなくなった。
困ったなあ。
素面に醤油の味。
僕の話をするなよ。

永遠を生きられない以上

「私は怖いんだ」

「怖い? 貴方が? 怖いのは私でなくて?」

「眠るのがとても恐ろしいんだ」

「眠ってしまえばそんなこと忘れるわ」

 

「外に出るたびあれが私を刺すのを感じるんだ」

「ねえ、聞いて。貴方を傷つけられるものなんて世の中には一つもないの」

「有難う、君と話していると不思議と」

「それは良かったわ。そんなこと、思い込みに過ぎないけれど」嘲笑う少女の目はとても優しかった。「ねえ、聞いて」

「嗚呼、君に出会わなければ! こんなにも人を愛することを知らずに済んだのに!」

「貴方、わざわざそんなことを私に言うためにここまで来たの?」

「可笑しいか? 私が」

「だって貴方、人じゃないんだから」

嘲笑う少女の目はとても優しかった。

遥か遠くにあってどうにもできなく思えるものでも、近づいてさえしまえばどうということはない。ならば、どうやって近づく? 彼は、真摯に生きてさえいれば、あちらさんから近づいてきてくれるものだと、そう信じていた。馬鹿馬鹿しい、が、真理でもある。彼の周りは良い人だらけで、可愛らしい生き方以外知らない。皆よく笑い、皆よく働いた。そうして、幸せに生きていた。彼の周りは良い人だらけで、幸せに幸せに幸せに幸せに幸せに! 

悪意を! 底しれぬ邪悪を! 

彼が生きた足跡を、彼が受けた絶望を、誰も知ろうとしないで幸せを行っている。

悪意を! 底しれぬ邪悪を!

奴らと彼は違うのだ。だけれど、おれがそれを指摘したところでどうなる?

悪意を! 底しれぬ邪悪を!

奴らが彼のことをわかるには、それしかなく、彼が奴らのことをわかるには、それしかない。

「私は、君を愛している」 

逃げ出す前に聞こえた言葉はそんな甘言。

「あの頃から君は変わらない。変わらず、綺麗だ」

誰かを不幸にするとしても、私はこの手を取るのだろう。

嘲笑うこともできず、彼女は。