永遠を生きられない以上

「私は怖いんだ」

「怖い? 貴方が? 怖いのは私でなくて?」

「眠るのがとても恐ろしいんだ」

「眠ってしまえばそんなこと忘れるわ」

 

「外に出るたびあれが私を刺すのを感じるんだ」

「ねえ、聞いて。貴方を傷つけられるものなんて世の中には一つもないの」

「有難う、君と話していると不思議と」

「それは良かったわ。そんなこと、思い込みに過ぎないけれど」嘲笑う少女の目はとても優しかった。「ねえ、聞いて」

「嗚呼、君に出会わなければ! こんなにも人を愛することを知らずに済んだのに!」

「貴方、わざわざそんなことを私に言うためにここまで来たの?」

「可笑しいか? 私が」

「だって貴方、人じゃないんだから」

嘲笑う少女の目はとても優しかった。

遥か遠くにあってどうにもできなく思えるものでも、近づいてさえしまえばどうということはない。ならば、どうやって近づく? 彼は、真摯に生きてさえいれば、あちらさんから近づいてきてくれるものだと、そう信じていた。馬鹿馬鹿しい、が、真理でもある。彼の周りは良い人だらけで、可愛らしい生き方以外知らない。皆よく笑い、皆よく働いた。そうして、幸せに生きていた。彼の周りは良い人だらけで、幸せに幸せに幸せに幸せに幸せに! 

悪意を! 底しれぬ邪悪を! 

彼が生きた足跡を、彼が受けた絶望を、誰も知ろうとしないで幸せを行っている。

悪意を! 底しれぬ邪悪を!

奴らと彼は違うのだ。だけれど、おれがそれを指摘したところでどうなる?

悪意を! 底しれぬ邪悪を!

奴らが彼のことをわかるには、それしかなく、彼が奴らのことをわかるには、それしかない。

「私は、君を愛している」 

逃げ出す前に聞こえた言葉はそんな甘言。

「あの頃から君は変わらない。変わらず、綺麗だ」

誰かを不幸にするとしても、私はこの手を取るのだろう。

嘲笑うこともできず、彼女は。