一過性

台風一家、と。ベタな冗談だ。だとすれば、今回のは長男ほどだろうか?


さて、着信。
僕は君を守ることなんてできやしないけれど、希望ばっかり見せないでくれ! どうしようもない男だからさ、なんだか期待してしまうよ。俺自身が叩き壊したものが、修理されて並べられることのないのに、その幻影ばかり見える。
携帯電話のなるごとに、激しく悩む。俺は、何故、こうやって薄っぺらな返事をするのだろう? 心にもないことを、延々と打ち返す。俺の伝えたいことは、こんなことではない。けれど、本心、伝えきれぬままにぶつけてしまえば、俺の砦が瓦解してしまうのは目に見えている。くだらなすぎる。開放してしまえば、いいのだ。門など当の昔にその役割を果たさなくなっているはずなのに、未だに見知らぬものを入れぬようにしている。俺の中に入れないなら、あの子が入れてくれるわけがないじゃあないか。けれど、俺の中があまりにも気持ち悪かったら、どうにもならぬ。俺が一方的にぶっ壊れて、はい、それで終わり。それでもいいと高らかに喉を鳴らせた日々はどっかに落っことしてきちまったみたいだ。
俺のできることはなんだったか、それさえも思い出せなくなりつつある。


一方的に、幻想に恋をするように。似非恋愛だ。擬似恋愛かもしれない。良い面ばかりのことなんてさ、ありはしないのだ。けれど、何故か、都合のいいそれが有るように思える。要は、俺はきっとさ、恋をしたいわけではない、のではないかな。否定と否定の連続でよくわからないけれど。愛とか恋だとかさ、そんな都合のいい言葉の、さらに都合のいいことばかり見ていたいだけじゃないのかな、ただ、見ていたいだけ。そんなものは見て痛いだけだ。言葉遊び。
子供でしかない。臆病だ。虚勢を張って、渡り歩けていたのは、常識が欠落していたからだろう。ちっとばかりの真理を教えてもらった日から、まっすぐに歩くことも適わず。


話がしたい。秘密や嘘なんか小指の先ほどもない話を、したい。綺麗ごとだよ、綺麗ごと。いつもの偽善、偽悪は鳴りを潜めて、細い手足ばかり露呈している。