終末ライフ

捨てたものがまた欲しくなるんだね。欲しくてたまらなかったはず、棚の上におかれたソレ、見えず、手を伸ばすだけで、背伸びをするだけで手に取れるはずなのに、もはや立ち上がることも楽しいと思えなくなっていた。心の弾むこと、琴線に触れること、攻撃的な、そうだ、爪を隠したままではいられないのであった。俺は、つまらぬ場所へと向かう螺旋の包囲から逃れねばならぬ。誰が俺に強制したわけでない、進んで入った回転から、俺は出ねばならぬのだ、そうして、それは今日でなければいけない。

人を見る前に鏡を見たらどう、彼女は笑いもせずに、そう言った。アンタがアタシにどう見えるか、そんなことなんて知らないけれどね、だってアタシはアンタのことなんて見ちゃいないから。でも、きっとアンタから見たアンタはぼんやりで、不確定なものに見える気がするの。それって、悪くないことじゃない? 僕は答える。先が見えない、なんていうのは蟲のいい話なんでしょうね、先が見えるのがさも当然みたいな顔をして。彼女はようやく嘲笑してくれた。


不安を愛せ。孤独から安易に逃げるな。その中でも、軽々しい安寧を憎め。けれどそれは、けして他者を貶すステージから初めてはいけない。反発はするだろう、憎しみは生まれただろう、けれど、それを表に出すこと、形として残すことのなんと俗なことか。