吐くまで嘘を

転機にはいつだって俺は死にたくなるんだ。節目節目、それが大きくあろうと、小さくあろうと、ね。やあめた、笑って俺は言う。やあめた。殺めた、笑ってあいつは言う。殺めた、と。似ているばかりに大人しく、熱い紅茶の中にさえも、その残像、残る。人間機械が歩いている。いきものぶらさげて歩いている。茶番だ! あまりにも喜劇、見え透いた馴れ合い、幸せ自慢に不幸大会、それで愛を知るのかい。俺は死にたくてたまらないでいる。犬畜生にも劣る、あの気持ちに俺はなる。爆音をくれ、ああ、爆音をくれ。嫌いだ。嫌いで、けれどあの子は好きなので、だから俺は死ぬしかないような気持ちになるのだ。
少したてば、また釘のようなあの泥濘がやってくる。ならば爆音で聴こう。迷いのない、無駄のない、研ぎ澄まされたクラクションを聴こう。都市からうねる朝が来る。ありふれた言葉で語ろう。すべてのくだらぬことは、単純な感情で語ろう。それでどうなっても知ったことか。それで壊れたとて、壊れたとて、壊れたとて! 元々バラバラのものが、形だけできているような体でいるのにね、ゴミがゴミになるだけだ。行き場のない怒りが胸にこもる。俺は、けれど、あの自分を好きな、あの、あの! あの、あいつと俺は別なんだ。もしも君が、あいつと俺を同列に見ているのならば、俺はもう死んでしまうほかにない。泥に足を踏み入れて、刺さる、刺さる、足の甲からのぞくは釘の先、ああ、また、茶番だ。消えてなくなるのを願って、俺はそこを後にした。見えなくなるまで遠くへ行こう、ずっとずっと、あの先へ。光など見えなくても、僕は、そうして逃げるしかないのだ。見えなければ無いのと同じだと、ほっとして、少し進んだところで、また死体が転がっている。明日旅に出ると言うその死体を横目に、僕は歩く。明日、明日、そうしてずっと未来まで、そうして死んでいるつもりだろう。今日、今日、そうしてずっと歩いていれば、どこかへ着いた気持ちになるのかい? 死体は俺に問う。昨日、昨日、そうしてずっと思い出していたから、目の前の刃物に気づかなかったんだろうよ。さあ、刺さって死ね。


このままずっと遠くへ行ってしまおうよ。君が笑えるのならば、僕はそれでもいいんだよ。それともずっと部屋にいるかい。君が悲しまないのならば、僕はそれでもいいんだよ。ずっと僕だけを見ていてよ。子供の僕が暗がりで泣き喚いている。分別だけで形作られた、揺らぎもせぬフレームだけの俺、明るい太陽の真下、涙など忘れました、言うのは明日、光が背を刺した。引き裂け。躊躇なく。食らいつけ。俺は君のために、そうして、君は君のために。それでいいのだと思う。それくらいの愛でないと、どうにも生きている心地がしない。これが恋なら、なんてね、ずいぶん近くにあるものをずっと探していたんだね。さあ、刺さって死ね。


独占、束縛、あるいは支配。そのどれもを否定し続けてきた。しかし、その片鱗が俺の胸を刺さぬとは、俺はどうしても言い切れぬのだ。俺は汚い男だ。俺は卑屈な男だ。俺は卑怯な男だ。俺はただ構って欲しいばかりに、白い可愛い皿を割ってみる童にすぎない。俺のこの愛情が、嫉妬や憎しみの裏返しならば、糞ッタレ、煙草の火も消えるよ。俺は、けして一人で立っていることができない。俺は、どうにかすると、日和ってしまったように思われる。愛とは何かも知らぬまま、苦しくている。ただ、寂寞の情、募る。