否定の名

不幸自慢に自意識自慢、お洒落自慢にひねくれ自慢とくらあ。縛られてからは、何も書けず、あの家の前、坂に置かれた空き缶のようだね。否定を恐れて何が書ける。拒絶を恐れて何が書ける。刺されるのを恐れて何が書ける! 伝えねばならぬ。
怒りを書こう、あのわからずやども、向ける怒りなどなく、俺は俺の信念にのっとって、俺の怒りを書かねばならぬ。拒絶を書こう、あの否定好きのペダンチック野郎、向ける拒絶などなく、俺は俺の倫理にのっとって、俺の拒絶を書かねばならぬ。幸せを書こう、あの不幸自慢の努力嫌い、むける幸せなどない、俺は俺の愛する人々の言葉にのっとって、俺の幸せを書かねばならぬ。愛を書こう、あの偽善否定の死にたがり、向ける愛などなく、俺は俺の最愛の人がしてくれた行為にのっとって、俺の愛を書かねばならぬ。


こんな夜にはコーラを飲んで煙草を吸うんだ。爆発して火を噴いた自意識、もう自分には、何も残ってはいないのだという簡単な認識、月曜日は煙草を吸うんだ、火曜日は煙草を吸うんだ、水曜も、木曜も、金曜も、土曜もそうさ。日曜にはコーラを飲んで、煙草を吸うんだ。今日は電子レンジで温めたコーラを飲もう。喉を這う熱さ、微量に残った炭酸は爽快さを拒絶する。なんて美味い飲み物なのだろう。
昨日の話だ。一時間と少し電車に乗って、俺はあいつの家に行った。くだらない話と、報告と、いくらかの大事な話をして、俺は酒を飲んだ。煙燻らし二時、三時。俺は死なずともいいことを知った。


そして今、傍らに、ホットコーラ。それは美味しいの? と彼女は聞いた。美味しくないよ、と俺は答えた。そんな記憶も、今ではつまらぬものだ。