バックドラフト、また腐った俺の脳が何か記憶を呼び覚ますように

俺は悪くない。俺は悪くない。俺は悪くない。そうして時間が過ぎ去る。俺は悪い男だ、これも三回分。いや、後者は数万回かもしれない。数日を過ごし、必要だと言われること、それに俺は答えを出すことができず、三度口に出すことで傷。ドブ野郎、犬人間、そうして何度も怒りを向けてきた存在に、俺はまさになっているのではないか。ロボット人間の夜は充電期間で、休息だという、俺はいまだ眠ることを覚えず、考えあぐねている。僕にはわからないよ、助けておくれよ、俺は全てを知っている、助けは手おくれよ。言葉遊びで茶化して深夜、二時、三時。いつもなれば街を歩いているような、そんな時間だ。黒猫は、恐らく俺に振り向いてくれないだろう。茶トラは、きっと俺を噛むだろう。俺の性器は怯えで縮こまっている。自分が、こんな風になるということを、まるで考えていなかったのだ。俺は、俺の信ずる道を歩いてきたつもりであった。俺は、そうしてこれからもそうするつもりであった。過去のことなど思い返しても仕方ないし、未来のことなど誰にも約束されたくない。だが、現実はいつでも俺の一歩前にいる。煙がいやに美味い。救われる。だが、安易な救いを求めることこそが因果を増やすことを、俺は知っている。火をつけて、数口吸って、すぐに消す。俺は、救われたいのと同時に、安易に救われたくはないのだ。俺は殺されたいよ。俺はあの、美しい人に殺されたいよ。だけれど、きっとあの人は俺のことを殺してくれないのだと思う。きっと、少しだけ笑って、あんたは若いんだから、考えすぎないようにせにゃね、ま、あたしも若いけど、なんてね、言うんだろう。それは夢か現か、そんなもの幻想に決まってるじゃねえか。
今の俺は誰にも頼ってはいけない。崩壊の淵で、やらねばならない。まさに今、俺は、他者に怒りをもってはいない。俺はただひたすらに、自己に怒りをもつ。それだけに全神経を注ぐ。俺は悪い男だ。刹那に繰り返された自問自答、走り去るスーパーカブ、朝を待つ。そうやって、今はそちらにいる。


俺は、あの子を傷つけたくない。欲望に負けることはないと常々信じていた、けれど、けれど、けれど、ああ、俺は、俺の意思のあったかどうかもわからず、前後不覚に(今となってはそれが開き直りの言葉に思えてならないが)欲望をぶちまけた。俺は保身に走る。俺は駄目な男だ。ボブ・ディランよ、僕に答えを教えておくれ。貴方は、今のこの俺を見て、答えは風に吹かれて、なんて言うのかい。俺には、今、綺麗な言葉など届きはしないよ。美しい言葉で飾り立てて、本当のことはごまかして、そうやってやっていくのかい? これからはそんな黒い生き物で生きていくのかい? 俺は駄目な男だ。そうして、あの子は何も悪くない。これは私信としてでなく、ただ自戒のためだけにある。責任は、全て俺にある。憎しみは、怒りは、あるいは、悲しみは、全て俺に向けられるべきだ。いつだってそう思ってきた。これを曲げるわけにはいかぬ。今度こそ死ぬかもしれないと、そう思った。俺はここで死ぬわけにはいかない。


いくらか、言葉交わす。私信でないことは重ね重ね。少しだけ、救われる。けれど、自己嫌悪は増していくばかりである。この責任は俺にある。俺はもっともっと考えねばならない。死ぬ手前までだ。俺は死んではいけない。あの人に、彼らに、あるいはあの子に、顔向けができない。死体で会うなんて嫌だよ。したい、で会うのも嫌だよ。これは言葉遊びとして、ひとつ置いておく。煙草の匂いは、すぐに布にしみこむものだ。それは思わずとも、わざとでも。香りが記憶を呼び覚ますと言う、それはいいものであったり、悪いものであったりするだろう。だが俺には、俺には、今は悲しいだけに思えて仕方ない。
全てを許されたとて、俺が俺自身を許しはしない。何もわからず、進むでもなく、戻るでもなく、ゆらりと燃える百円ライターの炎だ。風が吹けば消えてしまうが、煙草に火をつけるくらいのことはできる。君は悪くなんてないよ、なんて言葉が一番縛り付けるのかも知れぬ。俺には何もわからず、見えるのは暗闇に光る煙草の先だけ。


すべて、ゆっくりやるしかないのかもしれぬ。ずっと他者に説いてきたことが、今は自分の骨身にしみる。