少年よ、悩め
今、文章を書いている。小説とも呼べぬ、散文とも呼べぬ代物であるのは間違いない。そいつは、いつもここに書き連ねていることが散文足りえないように。焦燥文学とでも名づけるか。は、乾いた冗談だ。
風がやってきている。
僕は若くて、無力で、とても悲しい。
あの子はもっと若く、そして、もっと悲しいのだ。
少なくとも、風任せにしてはいけないのだ。僕は若く、何かを残さねばいけない。生きた証を、あるいはそんな大層なものでなくとも、死ぬ意義足りうる本当の歌を。追い風だとは思わない。向かい風だなんてちっとも感じちゃいない。吹き抜ける風。動かねばならない。
僕は稀代の天才でもなんでもないのだから、ぼんやりとした不安ごときに動かされるわけにはいかない。そのために死ぬならば、あの子のために死んだほうが幾分かましだ。心中するならば、僕だけ生き残るでもなく、あの子だけ死に損なうでもなく、二人ともがきれいさっぱり死んでしまったほうがいい。そうして、その川で記念撮影をされるような、そんな死に様か。
死ぬつもりなんてない。全ては仮定の話で、全ては過程の話だ。
あの子の時間を少しもらおう。
あの子の物語を書こう。
あの子の歌を作ろう。
あの子の前でそれを読み、あの子の前でそれを歌おう。
あの子に性的なことを僕は望まない。
あの子に静的なことを望まないのと同様に。
世界はすぐに裏返る。
ひっくり返って夢から覚めて、破壊衝動の朝を見る。
あいつを殺そう。
あの日声をかけられなかったあいつ。
あの時追わなかったあいつ。
あの夜泣けなかったあいつ。
あの朝忘れたかったあいつ。
あいつを殺そう。
不安と苛立ち。
酒と煙草。
真実の人に会わねばならないと思った。
先に生まれて、先に死す。
先生と呼べる人は数少なく、しかし存在していないわけではない。愛する人を師と仰ぐのならば、自己もそれに見合った存在にならねば、少なくともそうなりたいと願わねばならない。人間がかくあるべきだ、などという理想論を掲げるには、考えなしでいるわけにいかない。
全てが過去だ。
そうして、未来の全ては不安でできている。
確定していないからだ。
だから安定しないのだ。
人間は、しかし、筋を通し、かくあるべきという理想の人間像に基づいて行動し続けられるのであれば、何の不安も必要ない。
ふとこれを書いた日から、いくらかの日が過ぎた。これは本文足りえない。ただの決意表明である。けれど、指針は示せるのだと思う。これを筋に、いくらかのまとまりを持ったものを作り出すのが、今の課題である。夏は長い、形にできれば、と願う。