おめでとう

夕暮れ空がいなくなってしまってから、15mgがやけに重い。心の臓を縛っている心地がする。ヘッドホンの締め付けもやけに強い。圧迫感はそのまま開放の日を思わせる。俺は、いくらも繋がれていないのに、いくらでも箱の中の気分でいる。どちらかに転びがちな夜が一番怖い。小人閑居して不善を為す、これはもとは、他人の目の無いところでつまらぬ人間は悪さをするという意味のようだ。君子は逆に独りでいるときほど慎み深いのだ。俺は聖人君子でいられない、だからといって小人であるわけにもいられない。逃げ出したくて思う全てのことは、きっと眠るのには不適当なこと。俺の思い描き、ようやく出た結論は、きっとあの人なら最初に捨ててしまったこと。
語り、語られ、その中で、いくらかの結論を得る。舌先三寸口八丁、たわ言ではどうにもならぬと笑いあう。これは馴れ合いかね。俺にはわからぬ。本当ということの定義。俺にはわからぬ。しかしそれは絶望ではないのだと思う。確かに希望ではないが、暗い闇であるだけでは、ないのだ。これもあの人は捨ててしまったことだろうか? 俺にはわからぬ。これは希望、ひとつのね、期待でもある。
答えはまだ風に吹かれるの? そうして消えていくの? 耐え切れないよ、僕はずっと耐え切れない心持なんだ。吹っ切れてしまうのは気持ちいいだけで、それはそう、本当のことなのだけれど、本当が生まれているのだけれど、本当は。
本当はどこに消えた?
本当だけを追い求めて空っぽになった容器は遠く遠くあの日を透かしている。けれどなみなみとそそいだ濁りのない水はあの糞ッタレな思い出を綺麗に揺らめかすの。


俺にしかわからぬこの想いは、鉄筋コンクリートのようでもあるし、泡沫のようでもある。あまりにも重厚であり、ここにしか結論はない、こうとしか考えられぬと俺にささやく。けれど消えてしまうのだ。嘘だったのではないかとさえ思うのだ。仕組まれた実験のようなものだと思う。必要な器具、薬剤、揃えられていて、最初の準備を整えるだけだ。無理はひとつもなく、全てが道理のままに進んでいく。できることは条件を一つか二つ変えてやることくらいで、最初に波紋を起こせばそれは静かに、確かに広がり、一般的な効果を得る。いくらかの人がその中から特別を学び、それを生かすことを覚える。有象無象は結果だけを見て納得した気でいる。
無いものは生み出すよ、粘土みたいに。愛されたいなら愛して見せろ。それが唯一のルールだ。自戒として。へ、自壊としてかな、言葉遊びも大概に、対外にはね。


悲しい言葉は美しいわけ。楽しい言葉は美しいわけ。でもどちらも何故だかうそ臭くてかなわないの。ギリギリのラインでやってきたことが、今は、今は、ああ! 過去になっているの。