iiwake

俺を糞野郎と呼ぶ奴らを、殺さないといけない。俺を糞野郎と言っていいのは、まさに俺と、あるいは俺を憎んでいるだろう女の子だけで、それ以外の有象無象にそんなドブみたいなこと言わせてたまるか。世界の全てが俺を愛すわけではない、それどころか、世界のたいていは俺を殺そうとしている。愛する人よ、俺を愛してくれっかい? 俺は俺を見下す奴が嫌いだ。嫌いだ嫌いだ。もう嫌だよ。駄々をこねている。だから、もう、早いギターが偉いとか、顔がかっこ悪いと駄目だとか、背が低いと駄目だとかか、ミスしたら駄目だとか、死ねだとか、キモいだとか、糞みたいなことはやめにしないか。どうだっていいんだぞそんなことは。畜生め。殺す勢いでやるんだ。殺さないと駄目だ。ひとつひとつ殺していこう。黒い奴を、真っ黒な有象無象を、迫っている影を、追ってくる嘘を、殺したい夜を、あの子の涙を、愛する人の憎悪を、ひとつずつ殺していこう。
何にもいらない。いや、時間が欲しいな、時間と、許し。あとは勝手にやるから、それだけおくれよ。一番手に入らないんだ。少しだけあれば、何か変わりそうな気がするんだ。何か変えられそうな気がするんだ。あの子を救えそうな気がするんだ。あの人を泣かせそうな気がするんだ。俺が、俺が、救われそうな気がするんだ。救われたいんだ。
小馬鹿にするなよ。鼻で笑うなよ。


嘘だね。嘘だね。嘘だね。わかる奴だけわかってくれればいいって、言い訳だろう。理解されないのが怖いだけだろう。自分でもわかってるんだろう。糞野郎だって知ってんだろう。だから怖いんだ。だから壊れるんだ。簡単だ。知ってることで崩れるんだ。
俺は殺される、俺に、あるいは今いる場所に。もう嫌だ。
本当はそうじゃないのに、本当だって言っちゃ駄目だ。
逃げたら駄目かな。逃げた場所でも同じことになるのかな。難癖つけて言い訳して、それからまた投げ出すのかな。嫌なんだ。俺は今が嫌だから、逃げ出したいだけなんだ。みたくない。嫌だ。見たくないよ。俺は馬鹿だから、どこにも行けない。道がわからない。明かりは無い。あいつらはちゃんと生きてっかな、幸せかな、そう考えることもない。安定を望む。人を憎む。俺は、今、無為に人を憎む。回りの全てを憎む。嫌だ。嫌だ。


一番俺を見下してるのは誰だ。そいつを明日殺そう。
明日が遠い。今日は長い。生きるのは長い。死ぬのはいつだ。どこにある。夜はまだか。朝はまだか。酒は何処だ。屑は俺だ。
屑は誰だ。そいつを今殺そう。


あいつはしあわせか? だったら殺そう。
あいつはふこうぶってはいないか? だったら殺そう。
あいつはばかにしてないか? だったら殺そう。
あいつはみくだしてないか? だったら殺そう。
あいつはおれをころしたがってはいないか? だったら殺そう。
先に殺そう。


話したいよ。でも、全部迷惑なんだ。迷惑だって思われるんだ。押し付けるだけなんだ。俺は、押し付けたいだけなんだ。嫌なこと全て、嫌だって、言って、だからそれだけだ。それからは何も生まれない。どす黒い感情を撒き散らしたいだけなんだ。つながるなんて嘘だ、高揚の中の勘違いだ。全て嘘だ。本当はひとつも無い。これも嘘だ。全部嘘だ。
全部欲しくて、全部が手に入らないなら、全部いらないよ。気持ち悪いな。