朝焼け志望

あの子のことを書くとき、あの子、と俺が言うとき、敬愛してやまない人が言っていたように、あの子とは一人ではないことがある、特定の女の子をささないことがある、理想の人概念について話していることがある。それでも、時々は、俺の語りうるあの子はちゃあんと存在しているのだし、屑になっている俺にメールをしてきてくれる。電話はいつだって嬉しいもので、うきうきしながら煙をくゆらせ、話すのだ。直接会うのが一番なのだろうけれどね、どうにも遠い地に住んでいるから、会う機会がないので。ね、あなた、あなたのくれたものは役に立ちましたよ。ふざけろ、って思ったことはあったけれどね、とにもかくにも過去のこと、ありがとうね。そう、今日のはあなたのこと。愛してますよ。
美しい人々はいくらでもいて、可愛い女の子と、猫と、酒、愛する人、あるいは夕暮れ時のおしゃれな音楽。それが僕を救う。怖い夜は毎日やってきて、朝がやってこないのではないかという思いつきにびくびくする。朝は来るのだ。俺が寝なくとも、ずうっと毛布の中でも、世界は動いている。ゆるやかな日々には、暗い暗い夜でも、正しくそう認識できる。
それでも、本当に俺の中がゴミだらけの時間、地球は止まっていて、夜はとても長い、そう思う。極端に落ちているときはいつだってそうだ。少しくらいの落下なら、昨日の自分を思い出すことで、あるいは栄光の日々を思い出すことで、俺は救われる。止まった時間を動かすことができる。だけれど、本当に落ちているときは駄目だ。何も手に触れたくなく、しかし肌に何か触れていないと不安で、部屋はあまりにも広くなり、音楽はただのノイズになる。美しき人々、あの柔らかな視線、それさえも思い出しては、恐怖の対象となる。俺はここに、あなた方の前に、立っていいのだろうか? そんな権利を俺は持ち合わせているのか?
救われる方法論を求めている。大事なのはやり方だ、脱出するための。可愛い女の子が、俺のことを肯定してくれればいいのだが。一人でいいんだ。俺が自分のことを、全部間違っていると思わないために、ひとつだけでも正しいと思うために。


モザイクだらけだ。本当のことこそ、嘘のことこそ。わからないように隠されている。きっと、きっと、きっと、きっと。多分だけでしか、期待だけでしか物事は見えない。あの眼鏡の子が僕のことを好きだと言ってくれたけれど、僕はそれを本当に受け止めきれていたのだろうか、あれもそういえばモザイクだらけだ。真実は見えない。一生かかっても、ひとつになれはしない。それをわきまえた上で、さあ、僕は、好きだよと、言えたのだろうか。全部俺が悪かったのだけれど、あの子は今この夜、自分を責めてはいないだろうか、思うのは驕りかね。俺は俺の範疇でしか物事を考えられぬ、だから、俺はできる限りいろんな俺で、考えなければならない。
ね、ちやほやされたいだけなんだ俺は。音楽をやりたいなって思うのも、文章を書きたいなって思うのも、それこそ髪を伸ばしたいなって、全部ちやほやされたいだけだ。何が悪いかね。動機なんてどうだっていいだろう。何か、満足するものを作り、それでちやほやされて、それが一番だって当たり前だろう。
猶予期間のために、これからの日々がある。


cherryが美味くてね、いいね。乗りかえて良かったよ。