cherry

世の中いよいよ面白くないって、笑い事じゃない顔して思ってる。世の中いよいよ面白くねぇって、面白くないことばかり見てるからだろうな。愛する人も少なからずいるし、愛する夜の風も、何の因果か、一時よりは寒すぎない。空気の悪くない夜が続いている。それでもさ、月が明るすぎて晒し上げられてる気分でさ、逃げも隠れもできずに、月明かりに揺れる灰色を眺めている。怖いのだね。怖いから面白くないと思うのだ。怖いのだけれどね、自分の汚いところを見られているようで、恐ろしいのだけれど、それでも、少しだけ心地よいのだ。気づいたのはここらの夜、少しだけ救われた。愛する人々を、この月と同じように見ているのかもしれぬ、と一人笑う。笑うだけ笑って、それだけのことだぁな、と悲しくなるのだ。この悲しさも、ひとつの救い。仮定だけ山ほどあって、真理はひとつもなく、俺の立つステージの風景に代わり映えはない。だけれどもね、決め付けて、生きる、しかない。あの人が俺を愛していないのではないかということ、俺が本当に屑で死なねばならないのではないかということ、考えていてはきりがない。あの人はきっと俺のことを愛してくれていて、俺は少なくとも生きるだけなら許されている、そう思わねばならぬのだ。それがあの人に対する愛でもある。
世の中いよいよ面白くないって、面白く生きないとな、と笑っている。笑い事じゃない顔して、笑っている。
俺があの人を愛するように、あの人も俺を信じてくれればいいのだが。


俺の敬愛する人、俺が愛してしまうには申し訳ないくらい美しい人、彼女の燻らすcherryに憧れているのだ。