長い夜に際して

俺は俺の浅ましさを軽蔑する。変わらない、望まない、停滞している、それがどれほど浅ましいことか。けれど、変化すること、望むこと、進むということ、どれほど恐ろしいことか。失敗しさえすれば、全ては無になる。
いいや、駄目だ。無くしてしまう事を恐れて何になる。向上を望まない精神は、最早精神と呼べるほど崇高ではない。精神を持たぬ者は残骸だ。人間ではない、魂を捨てた者の成れの果てだ。


俺のことを待ってくれている人がいたから、嬉しいのだ。その言葉が嘘で無い限り。その言葉が幻想で無い限り。その言葉が気遣いゆえの、慰みのためだけで無い限り。俺は願う、真に俺を愛してくれる人のいることを。そうだな、神聖化しすぎるのは良くない。素晴らしい素晴らしいと讃えていると、終いに直接的には人間が見えなくなってしまう。心中できるほどの女と一緒にならねば駄目だ。そうでなければ、一々騒ぎ立てるべきではない。性欲と恋は違う。命がけだ。とにかく、最優先なのは、死にたくないと思えるか、だ。他人の言葉に一々脳髄かき乱される。あの子が俺に死ねと言うなら、俺は終わってしまうだろう。愛しい人よ、どうか俺を愛してくれ! 俺の中に蠢くすすけた感情の全てをも! そうでなければ俺は。
何をくだらない。屑だ、畜生だ、並べ立て、まくし立ててはいるが、結局のところ俺は自分の才覚を信じている。不安で仕方が無いときでさえ、恐怖に足を止めるときでさえ、いつかは俺ならば、淡い期待に胸を膨らませている。実行しなければ、俺の意義など嘘だ。俺の意味など空虚だ。風すら吹かぬ。
気違いごっこをしている場合ではないのだ。ぶっ壊すか、ぶっ壊されるか、だ。退廃を繰り返すのは、死ぬ前だけで十分だ。無意味な言葉の羅列羅列羅列羅列羅列羅列羅列羅列、俺は、ほとほと残念である。今は、愚痴ばかり言っている。壊さないと駄目だ。確かに、けして遊び半分で壊してはいけない。破壊は揺ぎ無い信念の下に行われるべきだ。しかし、それ以上に、俯いて呟いているだけならば、いっそ見なかったことにしてしまうほうがいい。それが嫌だから、破壊だ。自らの汚れた意識を、怒りに打ち震える胸の理由を、白日の下にさらけ出せ。壊すならば、それからだ。


友を望んでいる。かけがえのない愛する人を。本当の繋がりとは何だ。俺はまだそれを知らぬのかもしれぬ。それとも、わからぬだけなのかもしれぬ。
独り善がりが一人を殺す。殺されるのは誰だ。