死ぬときは別

馬鹿は死ななきゃ治らないってね、だったら馬鹿のままで生きるか、それとも死ぬかだな。馬鹿だから死ぬしかネェってさ、ほんとの馬鹿は死ぬことなんて思いつかないの。怖いなって思ったらさ、酒でも呑んで日を潰す、死にたいままに年をとる、そんな生き方だろうよ。賢明な少年少女よ、一度間違ったからって死ぬかよ。俺だって寄る辺ない気分なんだ。俺とあんたはおんなじか。それとも全く違うのか。
死にたい死にたいってさ! 何でもできるくせに!
自分が嫌で遊んでばかりいるなんてさ、そんな場合じゃないぞ。誰に言ってんのかな。俺は誰に言う。誰が俺に言う。部屋の片隅でうずくまってる奴に言う。壁を殴ってる奴が言う。手は痛いかい。それで、壁には勝てたかい。壊すたびに壊れていくんだ。良い気持ちの場所に行きたいな。それでも、生きるも死ぬも誰かに預けるなんて馬鹿馬鹿しいことは無いぞ。


ロマンチックなことをやらねば駄目だ。恐怖は密かに忍び寄る。楽しい楽しいと日々を送る奴らに騙されてたまるものか。毒も無く愛だの平和だの、純真無垢な顔で笑ってやがる。昨日も明日もあるものか、今日だってこんなに不確かではないか。


君が僕に優しくするから、僕は君に優しくしてくれるよね。ほざいてろよ。なんだってんだ。嫌だな。ほんとの気持ちは見えないなんて嫌だな。あの子の気持ちがわからないなんて嫌だな。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。気持ち悪いよ。あの男は薄汚い心を持ってるんだ。僕にもそんな気持ちがあるのかな。あの子はそれを見抜いているのかな。嫌だな嫌だな。どうだっていいって俺は思うことも、あいつにとっちゃ大事でさ、俺の言ってることなんてちっともわかんねぇのだろうな。俺もあの男を汚らしいと、よこしまだと、思ってるんだもんな。駄目だ。もう近寄らないことにしようか。あっちってこっちいって、俺の場所なんて誰かにとられちまえばいいんだ。そうでもしないと踏ん切りもつかない。今の場所に横たわって、笑いながら頷いてるなんてまっぴらごめんだよ。
進みたいのか、それとも逃げ出したいだけなのか。


何もないよ。僕には何もないよ。あんたには何かあるかい。最初から三倍くらいの声出してさ、途中で力尽きちまう男さ、僕には何にも無いよ。文章も書けなくなった。音楽も聴いていられなくなった。誰かと話したいものでさ、弱ってんのかな、それともまだそれくらいの希望を見出せてんのかな、携帯電話何処かにいってしまったから、目覚まし時計を久々に使った。
文章して生きていきたいな。音楽して生きていきたいな。死にたいな。死にたいな。死にたくないな。死ぬ前に殺さなければならない。
何もしないよ。僕は何もしたくないんだ。甘ったれるな。


ゆっくりやるんだってさ、俺は言ってますけどね、それで手に入らないものがあって悔しいんだってさ、馬鹿言うでないよってことさ。いろんなものを捨てていくんだからね、手元に残るものは少なくなろう。隣の芝生とは言っても、色よりかは面積の方が狭くなっちまうんだ、きっと。それでも、それでも、急ぐと辛くなる。朝が来るたびに怖くなる。だから。