馬鹿になっていく

難しいことはわからないさね。簡単なこと、ひとつずつ、さ、わかることだけやるんだ。今はがむしゃらにやる時間ではない。大事なのはもっと根幹に関わることだ。季節が流るる。ぬるい風も終わる。ゆっくりやるんだからさ、恐るるに足らない。そんな夜が来る。
どうにもここら数日ぶっきらぼうでいる。目に付いたもの、手に触れるもの、肌にまとわりつくもの、視線、声、捨てたいんだな、とにかく。焦るな焦るな。要らないものは、嫌いなものは、もちろんそんなものもとより無いほうがいいのだけれども、全部を全部楽しんでやる方が気持ちいいのだろうけど、ともかく近くにあると刺さるもの、痛いもの、恐ろしいもの、いつのまにか無くなってしまうのだ。切っ先が喉元すぎた後も、暑さなんて懐かしむものじゃない。綺麗なことだけ覚えててさ、びくびくして布団引っかぶった夜なんて忘れちまうのさ、それを思い出という。いつか、あのこのことも思い出になっちまうのかなぁ、なんて、考えながら、あんまり俺が汚いやんな、終わっちまった事みたいに話すなんてさ。俺の業は続く、生まれてきたときよりも余計に背負っちまうか、それも自得だ、しかたねぇ。


それでさ、やりたいのはさ、体に優しいパンクだな。かっこつけはいらねぇ。体動かさないなんて嘘っぱちだ。ぶっ壊れちまわないなんてそんなもんには騙されねぇぞ。真っ当にいこう。真正面からぶつけてやらなきゃ駄目だ。生き方がパンクな奴はだめだよ。時間くらいは守ろうぜ。外道なのと卑怯なのはみっともないぜ。そんな奴らが胸を張るなよ。生き延びて機会を待ってるだけならもうやめちまおうぜ。
飲もう! みっともないから、飲もう! 恥ずかしいから、飲もう! 矮小だから、飲もう! 馬鹿にされるから、飲もう! 酒もってこい。


何にもいらない、酒以外は、何にも。悪い意味でさ、まだ夢の中みたいな気分なんだ。泣きたい気分なんだ。誰かに抱かれたい気分なんだ。卑怯者だな、畜生め。あの子の手は振り払ったのに、まだ人間を欲している。俺はみっともねぇかなぁ。そうなんだろうなぁ。俺が全部悪いんだ、畜生め。死にたい奴は死ね。死にたいときに死ね。だからもう、ゆっくりやるんだ。死にたくなったら駄目なんだ。俺は死にたくなんてねぇぞ。エロいことだっていっぱいしたいんだ。声がいくらでも余ってるんだ。風のように歌が流れていないと駄目だ。生きるように歌わないと駄目だ。畜生め。今は我慢だぞ、焦るな焦るな。ゆっくりやるんだ。燃え尽きちまうのは一瞬なんだ、線香花火ほどももちやしない。勃起するように音楽をやんないと駄目だ。頑張ろう、や、頑張らないのがいいのかな。どっちもだな。頑張らずに、頑張ってさ、最後に気持ちよくなればいいんじゃないかな。