共に一人が死ぬまで

恐ろしいものが迫っている気がして、転げまわりたくて仕方がなくて、(そうしていないと真っ暗な夜が迫ってくる気がして)壁にあたるしかなくて、何かをぶっ壊せ、だとか、普段と変わらないものから疑え、とかいうのをさ、全部そのまんま受け取ってしまって、直接的にしか見えなくて、とにかく目の前のものをぶっ壊してやろうと思って、棚をぶっ飛ばして、楽器をぶん投げて、それから、窓ガラスあいてに椅子で立ち向かおうとしたところで、我に返った、いや、我なんて元からこんなものさ、自分で掘った穴の淵、立ち尽くすのは僕の影、見上げた空にも僕の影、何処かで見てる僕は陽炎の夏。
全部冗談みたいなもんなんだ。現実でない、幻想であり、極所では残像であり、本当の、それこそ本物も偽者も、嘘しかないような、幻覚なの。今までのこと忘れてやればいいのさ、思うには思い、あの人も言う、今までのこと忘れておくれ、と言う。それも信じられないだろう。俺は何処へ行きたい。僕は何処に向かう。私は何処に居る。内部衝動は、確かに、ゆるやかに行けと念じている。この足は、手は、体は、じわりとした痛みの中で、ぶっ壊さなきゃ駄目だと告げている。音楽じゃ何も変わらない。国も政治も糞ッタレだ。美しいのはあの日のあの子、一緒に見た夜の公園、守らなきゃ駄目だ。あの気持ちを、俺が感じたと言うことを、俺は覚えていないといけない。そのために、手も足も。夢物語なのかな、現実逃避なのかな。
そうだよ。
憤りの中で、何とかしなけりゃ、と一念、性器を握って荒い息。世界は何も変わらない。冷静になれ。あの子が俺と結婚してくれるんでなけりゃ、そうでもなければ、世界なんて変わりはしないの。明日死に、今日死に、そして昨日死んだ。死に足りない。死に足りない。死んでも俺のバカは治らない。三つ子の魂なんとやら、いや、もうやめましょうよこんなのは、残りもすべてこうならば、やめましょうよ、ね? 悲しい。
わからないことにわからないと言っていけないのかい。嫌な事に嫌と言っちゃいけないのかい。あぁそうさ、そんなのは弱者の論理だ。弱い犬ほどよく吠える。僕がそっちに合ってないのかい。そっちが僕に合ってないだけじゃないのかい。多数決はうんざりだ。女子に吊るし上げられた日から俺は多数決だけの論理がいやで仕方がない。少数が偉いわけじゃない、少数派気取って多数派をあざ笑うのも違う、かっこ悪いんだそういうのは。だけれども、それだけじゃだめだ、嘘は死なねばならない、暴力は死なねばならない。そいつが人間だと言うのなら、俺は犬にでもなる。弱い犬には誇りなんて必要ない。牙も爪もボロボロになっちまった。ただ、吠えるのだ。弱いから、吠える。喉かれるまで吠えて、それでコロリと死んじまうんだ。何もなかったようにさ、その骸は鳥にでも食われちまうんだけどさ、あの子が泣いてくれねぇかな、って、そればっかり思って、それでいいんだな。


某所で絶賛されていたので、つい犬山イヌコ女史の新譜をamazonした(英語で言うとamazoned)。あのね、所謂ニャースの声の人なの。eastern youthの2ndも買ったから届くのが楽しみなの。