チョン切った

無理やりに、満たされているなどと思ってしまわぬことだ。貪欲に、貪欲に、ただひたすらに桜の花の狂う季節を思えば良い。その時までには何かがあるだろう。その時までに何もなかったらなどと思わぬことだ。雨は止む、これだけは言い切る、雨は止む。けれど、人は雨の中死ぬのでなければ、日のあたる中死ぬのでもない。うす曇の空の下、も少し暗い部屋の中、死ぬのなら丁度その時だ。夏も秋も冬もやってこねばいいのに、考えながらも、家を一歩出ればそこは風の夏、鼠の空に線が舞う。幸せだなどと言わないことだ。幸せと思わねば申し訳ない、などと。ぶっ壊れたいだのさ、夜が恐ろしいだのさ、等間隔で迫る黒い影、見たのならば、嘘だと言わないことだ。本当だ、万事が万事、ちっとも幸せなどではございません。今ここで全部が終わって、明日からすべてが始まる、そんな夜でも何も変わりはしないんだぜ。優しい目、優しい言葉、優しい手、優しい、優しい、優しい、優しい、全部嘘だ。俺はそんなもの信用してたまるかよ。俺はあの、瞬間炸裂した興奮以外、何も信じることはできないのだ。
人間という生き物をどうにも信用しきれずにいる。信じるというのは愛することだよ。愛したいな。愛すことのない生き方はつまらないね。愛せば何か変わるだろうか、それこそ桜の狂うように。


誰かを殴りたい気持ちに似ているのだけれども、けして憎まれたいわけじゃない。それどころか、心のそこから憎むあいつなど影も形もないのだ。蔑み、哀れみ、同じステージに立とうとしない。
それこそ模範少年に疑義ありだ。口先だけ達者でも意味のないのだ。
だが俺は、ドブ野郎、と思う。今の世とは少し違うぜ。手前の命のが大事だからさ、屑野郎から逃げちまうんだ。日ごろ手をかむくせに危機に逃げ出すとは犬以下じゃないか。俺はそれを軽蔑する。犬ならば犬の方がよい。威張り散らして肩肘張って、そんな生き物の厭らしさよ!
俺は犬にはなりたくない。