酸化

誰かに何かを伝えてしまわねば、それで俺は素晴らしき人々とつながるのだ! なんてさ、ずっとずっと、切に思っていたのだがね、人と繋がるというのは根本から嘘なのかもわからぬね。嘘でなければ、それこそ、誰もわかっていないのではないかと、俺以外の人々もわかってなんかいやせずにさ、答えらしくない答えを探してる。
そうやって色々変なこと考えてもさ、俺の好きだった人はいつか誰かとヤっちまってて、これからまた誰かとヤっちまうんだ。畜生。恋するのが命がけならば、あの美しい人と命がけになりたかった! それでも俺はね、静かに諭されるようにね、それでも拒絶されたのだから。いや、拒絶というのはあの人に失礼だね、俺の被害妄想だ。悪い癖。

自分を責めるな。他人がちゃんと必要な時に責めてくれるのだから。

恐らくアインシュタインか誰かの言葉だったと思う。俺の好きだった人がぽつりと言ってくれた言葉で、それだから、俺は物凄く気に入っている。そもそも誰が最初に言った、だとか誰が広めた、だとかは関係ないのではないかね。思案した後にポツリと漏らされるあの人の言葉を、俺はいつだって愛していた。
それでも、それでも別れというのは必要なのだと思う。
俺の愛する友人たちが、幸せに暮らしていればそれは美しくて、俺はそれだけで嬉しくなる。けれどもね、やはり俺は俺のことを考えるのだ。俺は幸せになりたい。俺は少女マンガに出てくるような幸せな恋がしたいのだ。何か悪いことが起こってもさ、結局ハッピーエンドに持っていっちまうような、そんな王道なのがいいんじゃねぇか。