NINPININ

わからない、と伏し目がちに言うことは進行の、思考の放棄に過ぎず、とめどない半永久の停滞であることは知っている。考えるのに耐えられぬから俺はわからぬと喉を揺らす。俺は死を語るでもなく、生を語るでもなく、生くることの楽しさを思っていねばならぬのだ。俺が恐怖をいつまでたっても忘れることができないから、俺の動物としての本質は生に従順であると俺は信じている。しかしね、そう上手くはいかないものだがね。踏ん張り時には足が震えるものだ。ここぞというときに吐き気が止まらぬように。恐怖を思い出し、怖気づいて足の運べなくなる。
思う存分埒を明けねばならぬ。頑張りたくないのだから、最大に頑張らなくてもすむように、最大の効率が叩きだせるところを狙っていた。けれどね、結局それを探す作業の斜面の角度に気づいていなかっただけなのだ。なに、ずいぶん歩きづらいと思ったら断崖絶壁じゃねぇか、よくあることだね。いつだって思い返してみれば、頑張れという言葉が嫌いだった。責任を増やすのが億劫でならない。メリットがどんなに多くても、デメリットが目の前にあるのだ、見えようもないよ。大方の人は鏡でも何でも持っていて、それでもってどこまでも見えるのだろうがね、どうにも俺は持って生まれた視力さえもちっとずつどぶに捨てちまっているような状況だからね。
俺など小者も小者だから、少しでも追い込まれれば猫を噛むでもなく部屋の隅で震えるばかりだ。だからこそ、弱さを知っていると馬鹿みたいに信じこんでいたがさ、そいつは俺の弱さを知っているに過ぎないのだね。俺の愛する人々の考えることなどちっともわからない。いつだって探してんだ、俺にもっと良く合う眼鏡をさ。そういうことだよ。


俺を変えるのはいつだって俺の愛する人々だし、俺はそれに感謝しきりだ。それを思い返しながら、俺を殺す日々のことを思う。二束三文のこの命だけれどよ、なんとかしてぇんだよな。そのくせ思うのは、頑張りたくない、それだけだ。馬鹿野郎、子供でいられんのももう少しだぞ、糞。いや、もう駄目なのか? 糞。