自称事象

ごめんな、何をする気もおきねぇんだ。今こうして光る画面の前、座っているときさえも手の振るえがとまらねぇ。少し楽になって、息苦しさも消えうせたかというときも、ふとしたきっかけで激情が外部出力されちまう。ダンボールの無残に崩れていく様を見るのはとても悲しいものだ、事故のとった行動と現状とがかみ合っていない、覚えているが理解できない、なんだこれは。痛みだけが残る。
わからない。


俺という存在全て、髪の一本一本から役にも立たぬ腕や足、これまでの美化された記憶と雑多に積み上げられた本の数々、誰かに、預けちまいたい。今現在の俺には、俺自身の足を動かし進む力、残っているだろう。けれど、それを行使するとなると途端に逆上する。身の回りにあるものの意味を、意義を、ひとつひとつ確かめて、それでも安心できず、自己の持つ幻像さえも確かめたとき、さぁ、観測者の観測が間違っていたら、と気付く。根本的におかしかったら、最初の一歩が逆向きだったら、空がもしかすると水溜りならば、俺のしていることは何だというのだ、俺は何だというのだ。
携帯の鳴るが恐ろしくて、電源を切って叩きつけていたのを思い出し、恐る恐る灯す。きちんと画面は明るくなって、それで、切って投げる。理由など当に忘れてしまった、きっかけさえも思い出せない時の、ある。反復練習になりすぎちまっているのか、予想外さえもパターンだ。


ごめんな、お前のことじゃねぇんだ、勘違いさせちまったか? ごめんな。


土曜にへらへらと放棄してから、何時間たったか。思い出せば終わらせたくなる。何もかも、手に触れるもの、視界に入るもの、必要ないだろうと思うようになる。これから頑張ればいいじゃない、奴らは笑う。嫌だ。そんな眼で見られるのは嫌だ。笑うなよ。笑うんじゃねぇ!
だが、この状況を作っているのは誰だ? 俺自身に相違ない。自分で自分の首を絞めちまってるって言うのか? だとすれば、絞めているのは真綿よりは紐らしい紐だろうけれど。


ごめんな、ごめんな? いつもいつもいつもいつも、謝る時を失っちまう。きちんと整理がついたときはいつも手遅れ、後味の悪い祭りの喧騒が過ぎ去っていくのをあやふやな顔で見送った後のことだ。終わりのときが見たいわけじゃない。けれど、死に急ぐ、か。
終われよ、終わっちまえ、何もかも、最後の最後、一滴残らず終わっちまえ。全部が全部インチキなんだろ? だますほうもだまされるほうも、誰をだましてだまされて、まるっきり知らないんだろ? 知ってるも知らないも同じことで、おかしいもおかしくないも、壊れてるも壊れてないも、紙に滲んだ油性マジックのように裏から見えちまうんだろ?
もういいんだ、もういい。うんざりだ。


怖い。誰もが俺に無関係になろうとしている。当たり前だ。こんな俺の近くになど誰も痛くないに違いない。こんな気持ち悪い俺など。怖い。変わっちまうのが、変わらないのが。怖い。恐ろしくて仕方がない。
目が怖い。他人の目を気にしてしか生きてはいけないくせに、視線を怖がる。見えているのに知らない振り、気付いているのに無責任。なんだっていうんだ。気付かぬときも本当にあるんだ、信じてくれ! 狼少年か? 糞。糞。


終わりたくない。終わりたい。
わかった、始めたくない。
糞。