SARABA

皆が、思うままに、進んでいく。笑い、泣き、あるいは悩み、そろりそろりと進んでいく。俺は、ずっと、ここにいる。この場所から動くことを、数週間前から忘れてしまっているようだ。アイデンティティの、一つ一つ失われていく様を、案じる。自己が同一でなくなっていくこと、か。馬鹿になっている。何も持っていない状態でも、自分は、あった。けれど、それすら瓦解しつつある。瓦解した後は融解し、地面に溶け込んでいくのみ。覆水が盆に返ったとしても、すでに泥水だろう。
格好付けを嫌いすぎて、格好の良い、ということを忘れてしまっている。よくわからない。メールを書いては消し、書いては消し、する。何を書いても、気持ち悪く見える。もしかすると、全部が全部、気持ち悪いのかもしれない。もしかしなくても、そうかもしれない。かもしれないではなく、そうなのでは。
停滞に、他ならない。ここでこんな文を書いていること自体ね、気持ち悪いのだ。はい、これが真理です。はじめまして。


うろうろと、している。俺の大好きな人が、無言で、少し距離を置いたのを、呆然として見ているだけだった。俺には何もできなかった。何だ、いつもいつも何かできる風に思っていたのにさ、俺は何もできない。現実とはこんなものだ。これも、真理。嘘は得意だと、思い込んでいたように。
どんどん何もなくなっていく。俺は、それをただ傍観している。傍観もできていないのかもな、把握しきれていない。何をすべきで、何をすべきでないか、わかっているけれど、と思っているうちはわかっていないのだ。わかっていない、と思っている間もわかってなんかいやしない。
どうにも、わかることのないようだ。


プラスの多いほど、落下は激しい。


はじめまして。やはり、誰かに見られている。糞、どこかに消えたんじゃなかったのか。身をひそませて、隠れていただけだったのか!


あぁ、まだあの子のことが好きだ。帰り道、思い出すのは、あの子のことばかり。もう、終わったんだよ。わかっている。わかっていない。永遠、わかることの、ない。昨日、一昨日に意味のあったものが、意味をなくしてゆく。それどころか、数時間前、あるいは数分前のものも、存在意義を失って、色あせていく。塩素でも充満してるっていうのか?
馬鹿になってゆく。何もできないのではなくて、何もしない生物だ。生物だというのだって怪しいかもしれない。


最後の日になっても、わからぬのだろう。