YUDACHI

あー、あー、と二度三度、誰に聞かせるでもなく呻いて見せてから、ずっと倒れこんでいた。何の意味もありはしない。ただ、時間の浪費だけを望んだ。夕立の中の涼しさを利用して。眠るでもなく、起きるでもなく、まどろみの中で永遠、思考した。多分に、どうしようもなかったのだろう。どうしようもなく、どうできようもなかった。理解が不快で自戒の機会は溶解する。誰が悪いでもなく、ただ結果自体が最悪なだけだ。ありふれすぎて逆に珍しいのかもな、こういうの。
昔の、あの人のことを、今になっても時たまくっきりと思い出すことの、ある。忘れようとかさ、そんなことは何度も考えたが、ふとしたきっかけ、たとえば毛糸玉を見たりだとか、サンドイッチを食べたりだとか、映画を観たりだとか、そんなものでね、思い出すのだ。ただ、切ない。俺は、多分ずうっとさ、あの人のことが好きなんですよ。面倒だとかさ、いろんな悪いこと、いっぱい思っちまったけど、それだけは確かだから、逆にたちが悪いのかもな。単純に、性欲の溜まっているのもあるのだろう。自慰をする気概さえも起きず。


カップ麺を、食らう。なぁ、深夜に食うカップ麺の味、知ってますか? むちゃくちゃ美味いんだぜ。当たり前のことを、声高々に。


凄いものが作りたい。媒体は、多分に関係ないのだ。できるだけ多くの人間を、できるだけ巨大な力で、ぶっ飛ばしてやりたい。俺が、今まで感じてきた感動とやらと同じものを、俺の手で、と願う。媒体はさ、結局のところ何でもいい。俺がかろうじてかけるのはこんなちんけな文だからさ、一応精一杯ぶちまけてみるだけだ。ほかに、俺のできる領域があるのなら、それを使って、同じことをするだけだよ。スタンスは、きっと、自分の意思でさ、文をはじめて書いたときから、何にも変わっちゃいない。ただ、自分の書くものが、どれくらいの評価を受けるのか、知りたかった。今でも、評価ばかり見ている。他人の目を気にしないなんて芸当、できないような小さな男だからさ。

「この世の中って言うのは、どうやらピラミッド型にゃできてはいないんだよ。確かにピラミッドは、ある。視点を絞って考えよう。まずはものさしをひとつにして考える。例えば、お金持ちか、そうでないか、だ。頂点は確かに存在していて、上が下を支配するシステムが、完成させられている。けれどそんなものは予想の範疇だ。当たり前、と言い換えても良い。けれど、この世の中、底、って呼べるものはない。どん底、なんてよく言うけど、ボトムは存在さえしていない。なぜなら、君らが最底辺だと思っている場所、そこからもうひとつ、逆向きにピラミッドがあるからだ。なぁ、考えたことはないかい? 頂点がいるなら、その逆は、最底辺でなく、最低点じゃないかい? トップが飛びぬけてプラスなら、飛びぬけてマイナスの存在も、いるってことじゃないか? そうでないと、収支が合わない。別段全部足してプラスマイナスゼロになるように世界ができてるとは思っちゃいないけど、例えば、人間の中にもそういう平衡が存在していて、マイナスがプラスを、プラスがマイナスを、打ち消しあっている。そう思ったことはないか? 人間誰しも欠点はある、長点ばかりじゃない、そう思っていないか? 僕は、思っている。だから、世界全体の収支もある程度の値に落ち着くと思っている。ピラミッドだよ、そういうピラミッドふたつだ。能力とか、境遇とか、それらを測るものさしが変化すると、ピラミッドは構造を複雑に変化させていく。あのものさしと、そのものさしでは、視点が、あるいは次元そのものが全くずれて見えてしまう。その、ある種四次元的に展開されたピラミッドを全て足していくと、ピラミッドは見えなくなっちまうんじゃないかと、僕はそう考えている。だから、どこかのピラミッドで最低点だった人間は、別のピラミッドでは上にいる可能性が高い、そう考えるのは自然なことだろう。役に立たないようなことで頂点かもしれない。けれど、最低であればあるほど、最高だという思想は、希望がわいてこないかい? 要するにね、君は、今の境遇を嘆く必要は全くない。何か、その一番高い場所を見つけるまでの、辛抱だ。見つけちまえば、その物差しを一生使い続ければいい、って寸法さ。わかったかな?」
「………あなたがエジプトが好きだってのは良くわかった」
「まぁそんなところさ」


かろうじて、まとまりとは言えないが、いつもどおりくらいのちんけな文章、書けているか。
思考は支離滅裂だが、これは落下ではない、きっと、多分、おそらくは。