HEION

平穏な日々。


ずうっと見渡す限りどこまでも、最大限、マシな感じだ。最善でなく、最高でなく、最上でなく、最大限、マシな感じだ。嘘はない。類稀に綺麗なものもない。けれど、腐りきったものも、吐き気がするようなものも、今のところは、ない。ただ、マシな、だけ。予定調和、か。
夏の終わりを、蝉の屍骸が告げるように、俺の屍骸が隣で何かを告げている。すべては、やってきたことは、俺の軌跡とやらは、鈴虫が鳴くまでの時間稼ぎにもなりはしなかった。これも、予定調和、か。俺にできることは、夏の前と比べて、増えても減ってもいない。あまりにも変わっていない。変化の、まるでない。


なのに、なんでこんなに、最悪なんだ。


最悪が、雁首並べて、こちらを凝視している。意味がわからない。理解ができぬ。ここは最低の場所だ。
平常で、日常で、常でないことなど何もない。思い描いてきたことは、すべて目の前にある。
文章は書けない。書くことに意義が見出せない。


平穏な日々。