立つ鳥なんとやら

今夜は、決意表明の時。引っ込みがつかなくなるまで、自分に言い聞かせておく。


音が聞こえるか。高尚な音でなく、尊大な音でなく、荘厳な音でなく、身の丈程度の音だ。それを思い出せ。自分にできることはどこまでなのかを思い出せ。俺は知っているはずだ。自分の能力に見切りをつけることなど、一番得意だったはずだ。今度はそれを、今度ばかりはそれを、諦めのためでなく、保身のためでなく、けつをまくって逃げ出すためでもない、少しでもポジティブなことに、使え。
音を出せるか。今まで出してきた音だ。これから出す音でもなく、今出せる以上の音ではない。今までやってきたことを、そっくりそのまま、出してやるだけだ。俺はどのくらいの音が出せた? いや、それ以前に俺の音などあったのか? 思い出せ。どんなに下手であろうが、どんなに陳腐であろうが、表現できることを、表現できるだけ、表現し尽くせ。俺の理想の音など、ここにはない。けれど、現実がある。ド、ミ、ソ、ド、ミ。一応の音が出る。これだけしかないが、これだけで、何とかやって見せるさ。
音が見えるか。見えるわけがない。


俺に求められているのはなんだったか。誰にもできぬ凄いことか? そんなもんありはしない。だったら、俺独自のものか? そんなもん俺さえも知らない。俺に求められているのは、俺にできること、だ。気づくのが遅いさね。いや、求められているものがそうでなかったとしても、それ以上のものを求められれば折れちまうからさ、そういうことにしておこうぜ。
俺の大好きな人々と、同じ場所を、同じ時間を共有できる。それで良かったじゃないか。良かったと思えたじゃないか。あの時とおんなじだよな。嘘は一片もない。真実を、嫌うか、好くか、それだけの話だ。なぁ、俺は大好きだと言えたろ? だったら、今度も言えばいいさ。恋愛感情にも似た想いをさ。ラッパは俺の彼女だからさ。さすがにそれは変態すぎるか。


前向きなことだけを、書く。
前向きなことだけを、考える。
前向きなことだけを!