鉄砲水

朝起きて今の今までずっと雨。昨日も雨。明日も雨。

「雨が似合う女の子が好きなんだよなー、俺」
「それ、どんな子だよ」
「わかんね、まだ出会ったことないからさ」
「なんだそれ」
 ざぁ、ざぁ。
「やっぱなー、夏の似合う子はだめだわ、俺には」
「結局だめだったの、あの子?」
「あーもう、まったくもって駄目だった………思い出させないでくれ」
「自分が言い出したんじゃないか」
 ざぁ、ざぁ。
「晴れたらさー、プール、行こうぜ?」
「二人で?」
「なんでお前と二人っきりでいかにゃならんのだ」
「それに関しては同感だけどね」
 ざぁ、ざぁ。
「夏休みが全部雨だったら」
日本海側は絶望的だね」
「んなことを言ってんじゃねーよ。夏休みらしくないよなとかそういう」
「ん。でもさ、ありなんじゃないかな、それも」
 ざぁ、ざぁ。
「なんでだよ」
「雨似合う女の子、見つかるかも」
「………だと良いけどな」
「だと良いね」
 ざぁ、ざぁ。

改めて聞いてみれば酷くうるさい音と、ガラス越しに見る冷たさ。それか、もっと単純に、その中を歩いてきた、という先ほどまでの記憶だろうか? 珍しくきちんと飯を食って、また窓の外を見る。もう真っ暗で、何も見えはしない中で、あるいは遠くの家の明かりとの間に、雨の降っているのを、感ずる。


明日は愛すべき人の誕生日。すっかり忘れていて、何も用意してないから、ごめんなさい、だ。