久々に、ライトノベルを、書く。ライトノベルを書こうと思って書くと、下らぬものができるから、意識しすぎぬように。
と、思ったのだが、一万字ほど書いて読み返し、首をかしげる。面白くないのである。まったくもって面白くない。文章に勢いがない。脈絡のなく、表現も稚拙で、語彙に乏しい。人物は作られすぎており、会話は作られすぎており、世界は作られすぎている。都合がよすぎる。テーマは表現し切れておらず、あの日のような爆発力もない。

「何かあっても何もしない。僕は何もしない。僕は誰も傷つけない。僕は誰にも嘘をつかない。僕は誰にも希望を与えない。僕は誰にも夢を見せない。僕は誰にも語り掛けない。僕は誰にも怒らない。僕は誰にも悲しまない。僕は誰にも笑いかけない。僕は誰にも。僕は何も悪いことなんてしちゃいない。面倒なだけだ。面倒なんだ。意味がない。生きることにも死ぬことにも意味がない。死んだように生きても、生きるように死んでも、何の意味をもちはしない。どうすればいいかわからない。わからないからなにもしない。わかりたくてもわかるはずがないことはわかっている。なにもかもがわかっているから、なにもかもがわからない。僕は何なんだろう」
「普通すぎんだよ、お前。お前は別に異端でも異常でもない。ただのそこら辺にいる思春期のガキと一緒だ。そんな奴らが一番嫌いなんだよ、あたしは」
「横暴ですよ」
「その台詞はきちんと社会のお役に立ってから言いな、糞ガキ。生かしてもらってるご身分の癖にカロリーゼロで生きようなんて気持ち悪いったらありゃしない」

鉄槌を下すべきは、最終的には自分となる。他人を攻撃できるほどの牙は持っておらず、攻撃したとて虚言に過ぎぬ。見破られればそこで終わりだ。立場や関係性なんてものは、すべて俺の器用な立ち回り、不安定な上に建設されている。ボロをひとつでも出したら瓦解しちまうから、急いで嘘を隠している。あいつに挨拶した口で、あいつを気持ち悪いと影で言い、あの人に泣きついた夜さえも、笑い話とする。価値観は二転三転し、大事なものはいつでもわからず、言われたことをきちんとするいい子であり続けたいと願う。そのくせ、面倒が嫌なのでじっとしている。何も生み出せはしない。非生産的だ。けれど、生産というものの良さがわからぬから、首を傾げて吐いてばかり。
楽しいと感ずることが極端に色あせ、ただの苦痛と同程度に陳列される。ショーウィンドウの中は本物だらけなのに、鑑定書は全部偽者だとほざいている。音も文章も絵も何もかもがつまらない。
つまらないから、つまらないものしか書けはしない。自分が書いていて面白くもないものを、自分が読んで楽しいとなど思うものか。他人に関しては言わずもがな。
マイナスにねじくれた部分を見せびらかして、どうです、僕は可哀想でしょう? 痛々しいでしょう? だから守ってくれるよね? 叫ぶのか。ふざけんな。調子に乗るのもいい加減にしろ。俺は、普通であり、そこそこである。何もほかと比べて弱いところなんかありもしない。あったとて、それはただの欠点であって、誰にでもあるもので、泣き叫ぶほどのものではない。あからさまに普通。吐き気がするほど一般的。そのくせ、傷ばかり一流に見せようとしている。
誰かの役に立たなくてはいけない。誰かを少しでも幸せにしないといけない。誰かのために。そう考えることも、あまりに少ない。思うのはいつも自分のみを守ること。自分が傷つくのを回避すること。自分の身代わりをたてて自分以外の誰かを傷つけると言うこと。自分さえよければそれでいい、いつもそう考えている。そんなものはあまりに気持ち悪い。
日中は、笑顔で、できるだけ気持ち悪さを隠す。夜はどうにもならない。
どうにも、ならない。
希望も絶望もない。安心も不安もない。ただ、腹立ちと、自己嫌悪だ。俺は糞だ、どうしようもない奴だ、と言ったとて、イコール、そうなのだからみんな僕を守ってね、と自分が言っているように感ずる。それは俺がもっとも嫌いな行為だ。大して傷もなく、大して酷い状況でもないくせに、酷いですよねー、と同意を求める。
どうにも、ならない。
夏がある。夏といえば。
思い出すごとに吐く。