装飾DOG

距離のとり方と物差し、あるいは幻想と恋と嘘と偽りと純愛。混ざっていく。
俺はあの人らの傍らで笑っている。あの人らは俺の傍らで話している。それは接続しているでもなく、別次元。同次元は幻覚。あの人らの素晴らしいを信ずるでもなく、俺の汚いを信ずるでもなく。どこにも行く気はなく、どこにも行かない気はない。日々を、寄り道をしないだけの時間とするだけで精一杯だ。俺は息抜きをしないと死んでしまうらしいが、息抜きをすれば直後に死ぬ。どちらにせよ死ぬのなら少しでも前進を、と思う俺はマゾか。どうせあんまりな距離しか進めはしないのだから諦めろというのなら、もう俺は無価値だ。無意味で無意義。言われてきたことを全て信じるなら、俺はゴテゴテと装飾された犬に違いない。
さて、どうやら夏がやってきたね。

「暑いですね」
「暑いですか」
「暑いです」
「暑いですか?」
「暑い、です」
「暑いですか?」
「………暑くないです」
「よろしい」

タオルを濡らして首にかけて、扇風機。気化熱が奪われて、思いの外、冷える。まだまだいける。
文章を書くというにおいて、一向に勘が戻ってこない。女性と少年の話を、一つ書く。夏の話だ。夏は良い。題材として、美しいという以前に、単純である。むしろ、その単純さが美しいのか。あの人は夏が似合いそうだなどと考えながら、書く。つばの大きな帽子でもかぶっている姿を、想像する。しかし、白い肌が焼けてしまうのは好ましくないので、軽く頭を振った。
みみずの干からびたのを美しいとして文を書く人のいるように、何事においても綺麗なことはあるのだろうが、俺には何も見えない。夏の美しさも、かつての記憶を元にして書いているだけで、嘘偽りの感動を書いているだけで、けして実体験を伴うものではない。けれど、それで良いのではないかとも思うので。
さて、飽きたので睡眠。食欲も性欲も皆無。