微細衝動

雨が降っているよ。
目に付くもの全てに対して、怒りを抱く。素晴らしき助言も、素晴らしき人々も、素晴らしき音も、素晴らしき映像も、何の面白みをも持ち合わせてはいない。要するに、自分の居場所を自分で減らしていく感情なのだろうが、これが今俺のほぼ全て、つま先から脳髄までを満たしているのだからしょうがない。ただ無言で、不機嫌に頷き続けた。幼稚だというのはわかっている。何も解決しないということも。ただ俺には、あのときにはそうする以外に考えがなく、思考や考察の全てをも放棄しようとしていた。考えるのが嫌だと考えるのさえも嫌で仕方がない。頭の中を流れていく微細衝動は、単純なものへと、絶対値で変換されて。

 あなたは誰ですか。もしかして俺が素晴らしいと思っていた人ですか。なんだ、そこらの有象無象とかわらねぇじゃねぇか。
 俺は誰ですか。もしかして俺が汚らしいと思っていた人ですか。なんだ、そこらの有象無象とかわらねぇじゃねぇか。

忌憚のない言葉は、けして俺の周りの美しき人を罵るではなく、俺の価値を著しく下げるだけだ。あまりにも、意味のわからない暴言を吐き続けている。理由はなく、原因もない。ただ自分の腹が立っているというだけで、嘲り、ふんぞり返り続ける。俺のこの気持ちを、憎悪だけの気持ちを、わかってくれる人など誰もいないのだなどと叫ぶことはさ、俺の視野の狭さや、あまりにも俺が彼らを信用していなかったことばかりが、吐露されるだけなのだ。
自分を卑下して楽しむのなら、そんな時間はまるで無駄だ。他人を蔑んで楽しむのなら、そんな俺はまるで無駄だ。生かされている身でありながら、それを放棄しようとするなど、死を切望することに他ならない。生きてていいだとか、そんな見当はずれの台詞は心にひびきもしない。死にたいだとか言う馬鹿にそう言うのは、その分のカロリーが無駄だ。豚に歌を教えようなんて思うなよ。 時間の無駄だし、豚も嫌だろう。生きなきゃいけないんだろ。権利じゃなくて義務だ。勘違いすんなよ、俺。真理だと一度悟ったものを曲げるのは、如何に簡単と言えどもしてはならない気がしているから、馬鹿みたいに、ねじくれた価値観を抱き続けている。
雨がやんだよ。
ぽつぽつと、まとまった雨粒がたれる音がしている。ざざあ、という音は当の昔に耳を抜け、脳の中ばかりを回っている。
面倒だ。面倒なのが面倒だ。面倒なのが面倒なのが面倒だ。そして無限に続く思考の連鎖反応。ポジティブなものをまた書けるようになるまで、暗い話でも書くとするか。あるいは、素晴らしき友人が俺に言ってくれたように、ただただ、寝るか。