微細衝動

まるで久々であるかのように、同年のあの人に、恋愛感情のようなものを抱く。いやね、変態的だというのはもちろんわかっている。けれど、仕草の一つ一つにどきりとして、悩む。性的衝動を感じること自体、間違いなのだ。それなのに、恋愛感情などと! 靴先の触れ合う瞬間よ、ため息さえついて、俺はやんわりと目を閉じる。けして近まることのない距離感に、快感を、劣情をも覚えながら。
あの人が羨ましくて仕方がない。美しい。非人間的なところが美しいのは言わずもがな、それ以上に、人間的な部分が頓に美しい。愛情か、これは? 驚くような感情だが、俺はあの人を愛する。気持ちを伝えることは、ないだろうけれど、俺の理想の一部として、あの人を見ることとする。抱き合うことも、セックスすることさえも望まず、ただただ、窓を見つめる視線と、眠たげな声ばかりを求めて。


今からは、ただ吸収の時間。これが何時役に立つのか、などとぼやき、静かに憤るのなら、そんなものはそいつには必要ないんだろうし、これから必要となることもないだろう。必要とせねば、有意義に働きはしない。少なくともそれらを、ツールとして、手段として、認識している俺にとっては、ツールや手段としてしか働きはしないのと同様に。未来や将来なんてさ、素晴らしい言葉で飾られたものを、否定するつもりは毛頭ない。綺麗な嘘を付いてくれる人が、日々減っていくようなので、現実から目をそむけるために、俺は一人自分に嘘をつく。まだ大丈夫だと何度思ったことか。もう駄目だと何度思ったことか。
一人遊びは、いつまでも続く。他人に同意を求める作業は、これには全く必要ない。自己満足を、際限なく求めるために。ここまででいいだろうか、などと首を傾げてしまうのはいつものことだけれどね。