奉仕

五つ目からの怒りは、今、この夜に引き継がれて。
逃避をしたいのに、道具が何もない。あれもこれも必要だし、欲しいものがたくさんある。どうすれば、知られたくない部分をさらけ出さずに、安寧の地を手に入れられるのかと悩んでみるものの、答えはわかっている。やり方も、何もかも、俺は知っている。けれど、多分に、勇気の出ぬのだ。欲望、願望のあって、こらえきれぬというのに、この日に至って、まだ俺は迷っている。
今となっては知り合いとして遠くなりつつあるその人に、この俺の嗜好、伝えても良いものかと、また悩んでいる。別の、とても聡明なる奇妙な人に、伝えてしまったのは正解だと思っているのだが、あの人にはどうだろうか? 己の変態的にねじれた部分をさらけ出すことで、何かが生まれるとは到底思えないのは、前と同じ。けれど、あの人は、別の意味で、俺の求めているものを俺にくれそうな気がするのだ。媚びることの楽しさに集約されるのだけれども。
ふらふらとさまよい、共感する。あぁ、綺麗だな、と思う。美しいな、と思う。素晴らしいな、と思う。欲情する。ただ、姿を重ねて、俺の価値観がさらさらと崩壊する。けれど。俺のやりたいことの究極がそこにあって、俺の思う素晴らしいものがそこにあるのに、俺はどうやらそこにはたどり着きたくないらしいのだ。何故なのかよくわからぬ。完成してしまったものよりも、未完成のもの、それに移動する過程を望んでいるというのか? その作業は一番嫌なものであるはずなのに。
週末、終末が近づいているのを感ずるのとともに、変化をせねばならぬとわかってきた。完璧に、本当に、捨ててしまうか、あるいは持ったままで行くのか。一択だったのが二択に増えたので、俺は満足なのだが、もう少し、選択肢のあるかもわからないね。探求する気はないが、見てみたいとはぼんやりと。
性欲のわかぬ。あの子にも。論外。大好きだといえるし、あの子の髪を思い出すだけで、俺の頬は緩む。けれども、性欲の、わかぬ。この、願望のせいだろうか。だから悩むのだ。俺は進んで良いのか、とさ。このまま、俺が、俺の好きなことをやるのにしたがって、あの子に対して興味がなくなっていくのなら、本末転倒というべきだろ。キチガイだ。
じゃ、とりあえずメイド服。
笑って、気持ち悪いことを言う。喋っていないと、俺は変に思われるらしいから、できる限り騒ぐ。いつもと同じように話し、いつもと同じようにくだらぬことを語る。