君へ最大限の偽善を

死にたいという、君へ、俺の持ちうる最大の偽善として贈る。けして頑張れとは言わない。頑張るな、とも言うつもりはない。俺には、傘を広げて君を入れてあげるキャパシティはないからだ。ただ、君が、あいつらの、あるいは、あれやこれやのために、君という素晴らしいものが、色々な意味で死んでしまうのを、僕は望まない。
多分に、そうやって君が、死にたいだの、鬱だの、俺は駄目だの、ぐだぐだと聞こえるか聞こえないかの声で言うのは、意識的にか無意識的にか、助けのようなものをもとめているのだろうね。俺が決め付けてしまうのは悪いとは思うが、俺にはそう理解するしかないので、そう決め付けておく、ごめんな。壁を殴る日々も、いつまでも体操座りな日々も、冗談にしか思えぬ典型的な重さも、俺の身に降り注いだ時間程度にしか俺はそれを認識できぬ。だから、君がそれらをどう見て、どう思い、どう窓から外を見ているのか、俺には把握できないのだからさ。俺の尺で話をしてしまう俺に、君は怒りを覚えるのだろうから、もう一度謝っておく、ごめんな。
君は誰かに。わかってくれて、しかも、背負ったものを渡しても笑顔でいられるだろうそんな人に、延々と話しかけるのが良いと思うのだ。相槌をうってくれるだろう人に。そんな人がいないというのならば、それは少なくとも君のエゴである。俺が、君のことを愛しているのと同様に、皆が君を愛している。俺が、一時期そうであったように、その愛情が薄っぺらに見えて、嘘に見えて、吐き気だけをもよおす屑だと思うのならば、もう君が話しかけようと思う相手は、まったく知らぬ誰かか、あるいはどこにもいないのかもわからぬ。けれど、俺というちっぽけな存在が、君の事を、大事に思ってはいることだけ、伝えておく。それが何の糧になるか、あるいは枷になってしまうのか、それもわからないが、伝えないといけない気がして。
俺は馬鹿だから何もできないとよく言っているあいつが、俺に対して、寝ろと優しく言ってくれたように、俺は君へ、優しく何かを言わねばならぬだろう。けれど、適当な言葉が何も見つからないので、辟易しているのだ。言葉を選ぶことほど危なっかしいものはなく、君に曲解されてしまうのではないか、君に俺の意思が伝わらないのではないかと恐怖している。本心をさらけ出すのがとことん下手な俺だから、君には、とりあえずは偽善として、言っておく。あと、あいつにも、礼を言わねばいけないね。それは別の話として。な、俺はお前が大事で仕方がないよ。さて、君へ。
寝ろ。寝ておきて、それでも駄目だったら、また眠り続けるしかない。起きて次の日が、今日この日よりも、二ミリか三ミリ、良い日であるようにと。空元気で生きて、それでも足りなくなったら、頼るものを持たねばならない。な、たよらなすぎなんだよ。俺がどういうつもりでお前の横に立ってると思ってんだ。少しは頼れ。ま、俺ともども折れちまうかもわかんねぇけどさ、一本っきりで折れるよりは。
これさ、読んでくれているかどうかわからないが、読んでくれていることをただひたすらに願って。