感謝

人に話しかけようとするも、冗談しか浮かんでこなかったので、冗談だけで話す。しかし、今日はなかなか良い。全てが軽やかで。一度転びそうになるも、何とか持ち直した。うん、薄笑いで終えられそうだ。日が沈んでからの原則、あるいは後方への加速度には目を見張るものがあるが、今日はそれほどでもなく、正常。あまりにもなので、首をかしげ、鏡に向かって、何度も頷く。よし、まだいける。
終わりの、一段落着く場所の、見えているので、俺はがんばることができる。今の、今まさに通過し続けているこの状態はなかなか良い。近くにあるものが見えていて、何をどうすればよいのかがわかる。何をどこまでやって、どこで妥協して、どこで叫んで、どこで高まって、どこで切なくなって、どこで涙して、どこで笑って。簡単に、飯を食うのと同等に、理解することのできる。素晴らしい。しかし、この日々もあと五日。最高のタイミングで、最高の人々と、くしゃくしゃの顔で涙を流せるように。突拍子も無く、夜空に叫べるように。寒いだけの中心街で、美しき人々と抱き合えるように。気持ち悪さと嫌悪感を打ち捨てて、ただただ、高みへと、感動のみの桃源郷へと進めるように。
久々に、夜汽車の汽笛が聞こえるように。ゴトンゴトンと音の聞こえるのが、ここちよい。いてつくほどではないにせよ。寒さが風呂上りのほてった肌を冷やし、喉を傷つけるも、関係ない。頭に浮かんだでたらめなメロディを口ずさめる程度、気力が残っていれば良いのだ。あの子とのメールも、滞りなくうまくいくのだから。
全て嘘だと叫ぶとき、本当、なんていうものはどこに存在しているのだろう。もしかしたら……こんなにも綺麗なものを、汚いと。あぁくそ、もったいねぇ。捨ててきたものが。今から捨てるものももったいねぇ。あぁくそ。どこまで進行してやがるんだ。
とんでもなくポジティブなこの感じ。気持ちよすぎるぜ? どうしようもないので、また一人で変なことする! 人の目だけを気にすることとする。ただ、迷惑をかけぬように、笑い続けるだけだ。えへらと笑いながら、上目遣いだ。ぼんやりとすることなく、細い首筋と。あぁ、あの子に、あの人に、このことを伝えてしまいたいのだが、それはやはりできぬ。迷惑だろう。俺のこの感覚を、共有してもらおうと強要するのは、綺麗に塗った鉄塊を延々持たせることに他ならない。価値を、少しでも感じてくれれば良いのだろうが、多分に重いと思うだけであろうから、俺は多くは語らず、自己と向き合うだけ。いつか、カミングアウトできることを夢見て。
大好きな人たちへ。いつも色々言ってすまない。いつも非難してすまない。いくらでも大好きだ。俺の近くに、いようと思っていてくれているのか、嫌々なのか、俺には判別できないが、俺が近いと感ずることのできる場所に立ってくれていること、感謝する。ありがとうと、のどかれるまで言っても足りないくらいだ。ありがとう。メール、うれしいよ。今日話せたことも、うれしいよ。な、一緒に過ごせた時間全てが。