5→1→5→1

あまりにも満たされないから一人で変なことしたんだよ? 結局は欲望、願望でしかない。本能ではなく、ある種理性の奇形として、あるいは体の良い言い訳すらできぬ行動。何も考えず。情動が鮮明になるにつれて、ナルシズム的な陶酔とともに、輪郭がぼやけていく。素晴らしいものではなく、ひたすらにグロテスク。吐き気すらもよおす。けれど、快感にしかなりえない。純粋な、ぼんやりとしていない、鋭敏な快感。自慰のあとのいたいけな切なさほど共感してもらえるものはないだろうが、永遠、そこに落ち込む中で。
仕方なかったのか。もちろんこんなことをするつもりはなかったのだ。一ヶ月ほど前から、自問自答を繰り返し、単純な答えだけが露呈し、容認を迫る。そうさ、俺はやりたいんだ! ただの、気持ち悪い、胸糞悪い、一匹の変態でしかない。俺は終わってしまえば良い。ただ、それまでにもう少しだけ変なことを。
自分自身を把握できすぎていて、うんざりする。その代わりに、周りを把握することが全くできない。あいつが、あの子が、あの人が、何を考えているのかがわからず、怖い。調子に乗っている俺へ殺意を覚え、刺そうとしているのではないかと。気持ちの悪い俺に頭痛を覚え、首を絞めようとしているのではないかと。だから、無理にでも明るく。良かったよと褒め称え、矛先の向かぬように何とか。
逃げてしまおうよといわれることで安心を得るなら、今まで俺が笑顔で形作ってきたものはなんだったのか。俺のせいではなかったのなら、誰が責任を取れば良いんだ? 俺に突き刺さるはずの包丁は、俺が刺されるために叫んだ言葉は、結局どこへ行ったんだ?
詳細を、調べる。より高いランクへと、より高いレベルへと、より高い次元へと? 要は、より汚い場所へと向かっているのに過ぎないのに! 高まって、どうしようもなくなって、切なくなって、ただただ体をまさぐるのみならばまだ良いが、それが自己表現として変異し、別の形として登場し、俺に、同意を、求める。俺は、首を縦に振るしかない。泣きながらでも、薄笑いを浮かべながらでも、あの人に相談しながらでも、あいつと話しながらでも、あの子とメールをしながらでも。何とかしたいとは思わぬ。ただ、今からが、どうなっていくのかがわからぬ。今からどうしたいのかがわからぬ。陽に当たることを拒む肌が、夏をも拒むのか。あいつをうらやましく思う自分はどうかしている。けれど、正直である。俺は、ここを、この場所を、望んでいたということなのだろう。
どうしようもねぇ。たいがいにしろと怒鳴りつけるつもりが、肩を抱いて一緒に泣いてやる。俺は、とんでもなく偽善者でしかない。良いことをしているつもりは毛頭なく、打算的に、できるだけ自分の得になる方向へと。愛情ではない。腐ったようなどぶ色の意識。
5から1に振れ、俺が俺であることだけを問い続ける。この情欲は、俺のものなのか、それとも過ちなのか。それは、分析ではなくて、すでに、選ぶ領域へと入っている。どちらが、より俺に、あっているか、好ましいか、俺の状況を改善、あるいは改悪、あるいは進展、あるいは崩壊させるか。その選択だけなのだ。俺とあなたが、共存できるように。俺から社会が離れていかぬように。俺が社会と離れていかぬように。俺とあなたができるだけ長い時間を、素晴らしい感覚で、過ごせるように。だから、俺は、必死に隠すしかない。
なぁ、悩みなのかもな。これは、俺としては、はじめての、根本的な問題。他人にはどちらでも良いような、けれど俺の生死さえも決めてしまうような。実感の問題である。今からの時間を、どのように感じるかの。


あ、眼鏡をね、買ったのだよ。あかくてさ、おっきくてさ。乱視のせいでレンズが水曜に到着とのこと。それは楽しみ。