明日には終わるとて

向かうところ敵なしの躁の波がきている。久々に圧倒的だ。
楽しくて仕方がない。全てのものが明るく、苦労を苦労と思うことすらできはしない。口に入れるもの全てが身になり、口から出すもの全てが形になっているような気さえする。今の俺は無敵だ。神にだって勝てる。あの子をぶん殴ることさえも笑顔でできるだろう。
俺は凄い。俺は凄い。俺は凄い。俺は凄い! ひゃっほう!
あまりにも鋭敏で、あまりにも素晴らしく、あまりにも格別だ! 全ての意識は最高まで研ぎ澄まされ、物音は俺の耳から入り、脳で音楽となる。単なる単語の羅列は俺の目から吸収され、文学となる。こいつはすげぇ、ぶっちぎりだ、飛びぬけている、天は近い。今なら俺は、飛べる。今なら俺は。
なんだこれ。れべるひゃくでさいしょのざこにさいきょうまほう! そんなランクの話だ。楽しくて仕方がないというか、笑みが無意識にわきあがる。カフェインが血管中をめぐる。俺の背後には何かがいて、そいつが俺を前へ前へと推し進めている。目がある、どこかはわからぬが、見られている。恐怖はいつもの通り感ずる、けれど、既に今は取るに足らぬものとなっている。
指の震え等何の問題にもなりはしない。俺の足が、階段さえも満足に上り下りできぬとも、俺は飛べるのだ、足など必要ない。必要ないものははずしてしまえ。ばらしたあとは、どこかに飾っておけば良い。不必要なものが手にとるようにわかる。これもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれも必要ない! 俺はどこまでもいける! 重荷はいらぬ!
明日には終わるとて、関係ない。一瞬一瞬の、刹那的な快楽に身をまかしているのではない、波なのだ、乗りこなすのだ、この大海の向こう側へいけるのだ。向こう側が見える。何があるかがわかる。幻想ではない、これは現実だ。美しい。
目玉が必要だ、鼓膜が必要だ、今の脳では満足できぬ、今のこの俺には。
俺のことを存在しないといっていた俺へと告げる、そんなことはない、この俺様はここに、この場に、今まさに、ちゃぁんといる!