深読み

「持ちますよ」
「いいよ、別に重くもないし」と言ってからその人は少し微笑んだ。「いや、やっぱり持ってもらおうか」
僕にネギが突き出たビニール袋を渡しながら、格好いい人は言う。僕がこの前言ったことを覚えてくれていたようだ。
「今日は食べていく?」
「いいんですか?」と、僕は言う。「迷惑でなければ」
「迷惑なわけないだろう?」
そう言って、彼女は少し口をつぐんだ。
「ご馳走になります」
そうやって笑うのが、僕ができる最大限の感謝だった。
「今日、何作るんですか?」
僕はビニールの中をのぞく。
「鍋……かな。水炊きでいいかな? 凝ってもいいんだけどね、今日はあっさりいきたいから」
「あれ………一人で鍋やるつもりだったんですか?」
急に黙ってしまう彼女に、僕は少し嬉しくなって問う。
「最初から、呼んでくれるつもりだったんです?」
「………まぁね」
手で顔を隠して、軽く首を振る彼女。その仕草は格好よく、愛しいものに思えた。
「どうも下手でいけないね」と、やはり首を振りながら言う。「学生のころから進歩がないのかもしれない」
「何がです?」
「……何でもないよ」
うつむいてそう呟いてから、彼女は笑う。
「料理もね、実は最近はじめたんだ」
僕はとても嬉しくなった。