MEGANE NO ANO KO

足などないかのように寝てばかりいるし、手などないかのように何もしていないが、安定してはいる。落下はきておらず、きれいなきれいな夏の花を想っている。酒のせいだろうかね、と考える。何も食わずに飲んでいたせいか、頭がぐらぐらする。指も震える。けれどね、恐怖の中での症状に比べたら何の痛みもないよ。世の中は素晴らしいんだ。吐くまで飲んでさ、あぁ、空なんか綺麗だって仕方ないなって思ってさ、それから、あの子のことなんて考えながら寝ちまうの。シャワーなんか浴びても頭痛は消えなくて、次の午前中なんかロメロのゾンビみたいでさ。最近のゾンビはよくないね、速いんだもの。遅いゾンビはいいよ、遅くて、いっぱいいて、ゆっくり追い詰められるの。
笑うしかない、なんてあの人は言うの。笑うことしかできないんじゃなくてさ、笑っていかないと駄目になっちゃうよ、くらいの意味だったんだろうけど、それはそれで救われた。この人も同じなんだなーと思って、いやね、結局同じなんかじゃなかったんだ、あの人は俺よりもっと素晴らしくてさ、それでも救われたんだからね。勘違いだって何だって、陳腐に言うなら居場所の確認というかな、位置の定義というかな、どだい俺の生きるなど泡沫の様だから、ひとつには定まってしまわぬものだけれど、一瞬一瞬、固定していかないとそれこそ消えてしまう。
欲望って何だったかな。脳にまわった液体のせいか、性器も硬くならずにいる。一回自慰でもすればきちんと落ち着けるくらいの夜なのだけどね、それもかなわないでいる。でも、落ち着かないのもいいのかな。妙に生々しくて、何のことやらと考えていたら、現実だった。嘘なんじゃないかな、と思ってしまうのは俺が駄目な男だからだね。あの子と最後まで過ごせなかった夕方のことだとか、思い出しては後ずさり。


あぁー、女の子は可愛いなぁ。死ねる! 俺はこの子の為なら死ねるんだぞ!