あの町に至る方法論

いちぬけた。何にも変わらないってのはわかってるさ。変化はいつも自分から。俺が変えていくんだ。俺が変えられることなんてないってさ、俺には何にもないってさ、馬鹿言うでないよ、俺には俺があるじゃねぇか。俺がこれ以上終わってしまわぬように、俺がこれ以上空を見続けられるように、休日に外に出られるように、平日の外界をおびえぬように!
何も言うまいね。向こうから来た俺が行くのはやはり向こう側なのだね。かっこいいキチガイの価値観なんておしつけられてたまるかよ! 俺はさ、部屋でうずくまってテレビなんか見てそれは違うそれは違うと言っているふざけた奴を家から引っ張り出すようなことをやるのだからね。一緒に踊るのが楽しいのだ、画面の中のプリマよりも俺はあの美しい人々と手を取り合いたいんだぜ。あの、傍観してやがる、つまらない野郎が俺のことを屑だと言うんだ。あの、文字ばっかり見てるあいつがそんなことくだらないと言うんだ。あの、眼鏡をかけた大人がもっとちゃんとしろと言うんだ。ちゃんとしてたまるかよ。幸せな気分になりたいんだぜ、俺は。幸せも愛も何もかんも捨てちまってから何かしたって遅いんだ。心の中でくすぶり続けてる思いさ、そいつを持ちながらだったら何だってできるんだ。一歩一歩、すべては布石に過ぎぬ。大きな喜びのために。世界はそれを愛というのだ、と人が歌うなら、愛こそが世界だと俺は歌うよ。いかれちまった景色が俺の脳髄を揺らすなら、その揺れに上手いこと乗ってやるだけさ。辛い辛いという顔をしないことだ。その顔は心に深く食い込むぜ。笑ってることが大事だな、つらいってさ、怖いってさ、考えたくないってさ、とにかく笑えよ。笑えるように世界をぶっ壊してやるんだ。だから、そのために、繭の日々って奴だな。繭のまま腐り果てるつもりはないし、しかし蛾になって羽を見せびらかすようになるつもりも無いぜ。俺はネオテニーになりたいんだな。


必要なのは再認識と、たゆまぬ気力。飯を食うことだな、きちんとさ。思い込みと気概は違うと思っていたがね、何、同じもののようだよ。自己からの決め付けの嵐はいつだって不安しか呼び込まぬのだ、それこそ憑かれたようにうわ言ばかり呟くならば、現実から目を背けることも必要なのではないかね。ひとつのものさしに縛られぬよう、いくらか注意深くならねばね、それこそ俺は死んでしまうよ。