失聖地

色々なことが終わり、見えていたものが全て始まってゆく!
忙しさの中に感情が埋もれていくのなら、それが一番楽しい状態だ。今の僕には、僕自身には、本当に何もなくて、僕を取り囲む環境にはいくらでも綺麗なものが満ち溢れていて。羨むでもなく、妬むでもなく、素晴らしいなぁと思って見ている。愛なのだろうね。俺が、あの子に感じていた感情、あるいは、あの子が俺に抱かなくなった感情。
ここ数日の間、何も考えることのできない時間が多々あった。理由はただ、失恋したからさね。こんなにも心の多くを、あの子が占めていたのかと思うと、俺は驚きの声とともに感謝の意を禁じえない。あの子が、勇気振り絞って、真夜中に電話してきて、な、泣くなよ、って俺のなだめる中でさ、別れたほうが良い、って、ポツリともらした瞬間よ。わかってたんだよ、俺にもさ、電話、かかってきた瞬間、覚悟はできていた。電話中さ、あの子の声聞きながら、涙さえ出なかった。当然のことのように。俺たちは、どうやらどのような手順を踏んでみても、あの場に至る運命だったのだろうよ。携帯電話の向こう側に耳をすませてみれば、鼻をすする音とさ。泣くぐれぇだったら、かけなければ良いのにさ、こんな電話! 何度でも思ったけれど。顔つき合わせて言えない話なら、しなけりゃ良いのにそんな話! いくらでも言いたかったさ。でもさ、それを言ってしまえば、俺があの子を否定することになるんだろ? いくらでも、俺はあの子を肯定してやるつもりだった。あの子が、俺より他に良い人ができたとて、俺は泣き叫ぶだけで、あの子の肩をつかむことはしないだろう。そうさ、ただの意気地なしの言い訳だ。要は、振られたんだぜ、俺。奇麗事にすることはできない。全部俺が悪くて、あの子は悪くない。それくらいあの子を肯定してしまうぜ俺は。な、今までのお返しに、それくらいはしようじゃないか。迷惑かけっぱなしだったものな。
でも、泣いてばかりいた。かっこわりい。でも、涙しかでねぇ。声も出ず、壁に向かって座っているだけで時間は過ぎていた。
けれど何とか、ここにこうして書くことが、公開してしまうことが、できる状態までやってきた。悔いることは多々あり、反省すべきことも多々ある。だからなんだってんだ。そう思えるところまでやってきた。ね、俺はこれからも、えへらと笑うだけだぜ? それは、敬愛すべき人々と、俺の横に肩並べてくれる人らに、約束する! 嘘もさ、できるだけつかぬようにするし、隠し事も、隠し通せる範囲にする予定だ。だからさ、手始めに、あの子と俺の間がぶっ壊れて、俺の頭が少々回らなくなったのを告白しておく。な、静かに見ていてくれるだけで良い、いつものあなた方がしてくれていることさ、ありがてぇ、それだけで良いんだぜ、俺は。
さて、届くことのない感謝の言葉はこれで終わり。思い出に、きれいなだけの物になる前に、あの子とのことをもう一度思い出して、整理、つけておかないとね。あの子からもらった本もマフラーも何もかも捨てちまうぜ。