KAKUSHIGOTO

「だったらさぁ、全部嘘やん?」
キーボードのsキーが壊れかけてて、打ちにくくて困る、という話のあと、彼女が同じ調子で、彼女の彼氏さんの話、している最中に、コーヒーの替えが来た。彼女の断らない主義はそのままで、僕は苦笑することが出来た。ファミレスでこんなに時間をつぶすのは久しぶりかもしれない。全くプラトニックで、うんざりすることはするのだけれど、この時間もとりあえずは悪くない。
「そんなことないと思ってたのにさ」
愚痴を聞く余裕、僕にはないのだけれど、彼女はそんなことお構いなしだ。エロいこと、したい、と目の前の小さな胸を見ながら、はたまた、見えない部分を想像し、頭の中に創造しながらね、僕は思うのだけれど、そんなことはまさか伝わってないだろうね。
そうさね、恋人になろうだとか、そういうことは考えちゃぁいないよ。いない、よ。そう思うのも白々しくて、まいってしまう。結局、こういう場で話すことが思い浮かばないから、くだらない話、してしまう。だからこそ彼女は僕の目の前にいてくれているのかなとも思いながらも。
「なー、聞いてる?」
彼氏さんにはさ、こんな口調で話したりしないのだ、と笑う彼女に、何かそれって違うんじゃねーかなー、という思いを抱きかけたが、あの日、僕が彼女を一番に考えて全部肯定していてやろうと思った日から、それは禁じられているのだ。自分の中での約束なのだけれど、こればっかりは、破れずにいる。
聞いてる聞いてる、と上の空でいう僕に、彼女は


そこで目が覚める。寝ていた記憶はないけれど。
夢の中の彼女は僕のあの子だった。多分にね、彼女には、今の夢の中にいた僕のような立場のひと、がいるのかもしれないのだよ。それはさぁ、ごくごく普通なことなのかもしれないけれど、少し悲しいさね。
僕が彼女に伝えていないこと、腐るほどある。同じように、彼女が僕に伝えないこと、たくさんあるのだろうが、関係ないね。僕は彼女が見せてくれる部分を愛せばいい。見えない部分を推測する余裕なんて、ないね。