宇宙の真理をつかんじまったかもわからん。と思うこともしばし、自分すらつかめていないことに気づかされる。それはあの子の一言によってか、いや、恐怖によるものだろう。
僕は今、小説を書くヒキコモリが主人公の小説を書いているよ。多分途中で飽きることは必至なのだけれど、これは良いね。自分勝手、自己中心、それだけで書いていられる。というか、僕のその部分だけ、夜になると露出するその場所を露呈することが出来るのだ。けれどもね、ヒキコモリ全てがそうであるとは僕は思わない。一部がそうであると信じているのは間違いなのかね? やはりね、これは僕だけの論理なのだ。僕だけの倫理なのだ。彼ら、彼女らは、無言で、「それは違うだろ」と思い続けているのかね。それでも、僕は、僕自身を否定するために、彼らをぶち殺してしまいそうな文を書くよ。
僕を嫌いになったのなら、そんなものはそうでいいよ。諦めはもうついた。離れていくんなら、僕に知らせておいておくれ。けれどもね、僕は君たちのことがいつまでも大好きだ。ばらばらにしたい。ピースごとに愛することが出来るようになった。だから、本質、目を伏せて、綺麗なところだけで笑うことが出来るよ!
そう思うと、全ての人間の素晴らしさに辟易する。しかしね、自分というものの醜さにも辟易するものだね。読み返し、文を書いては消し、一行も進まない。三時間同じ行を見つめていた。この一言で、この言葉で、彼ら、彼女らは、僕に対して憎しみを向けてくれるだろうか? と密やかに考えている、それは条件として伝えておきたいのだよ。見ているかね、君に向けての信号だ。ところで、誰?
目立つ人間が、人間というものの象徴ではなく、ただの目立つ人間の代表だということに気づかねばならない。僕は君たちの事がわからない、考えていること、やろうとしていること、好きなもの、嫌いなもの、その全てだ。語り続けることのできる彼が僕の知るHIKIKOMORI少女の代弁が出来るなんて僕には思えない。彼女の世界はいつでもシャープすぎて、つきささるみたいだね。目がたくさんある、視線を感じる、どこからか、真後ろから見られている、そういうお話のようだ。
怖い、のだ。自分の話をしよう。
僕というものが、いないのではないかという空想、いや、現実に捉えられて、どうにも怖くて仕方がない。ベタな話だ。しかしそうなってしまうと、唐突過ぎてうんざりするね。あの子もいない。彼も彼女もまるで嘘だ。ただ、僕は見られている。確かに、目が僕を。窓の向こう、カーテンの中から、確かに存在する。やはり、一番は後ろだ。
後ろに何かが潜んでいる感覚に、振り返り、何もいないことを確認して、もう一度振り返る。顔を戻すことが出来ないのだ。前にいたら、僕はどうしようもないだろう? 怖いのだ。繰り返し言わないと伝わらない。伝えることを思って書いてはいないのだけれど。僕は彼女に似ているのかね。そんなの、渾身否定するよ。ふざけるなよ、僕は大丈夫なんだ。差別だってなんだって、自慢げに振り下ろせる! だから、僕は。
顔を戻す。あぁ、大丈夫だった。しかし、怖い。後ろが埋まっていないと安心できない。後ろが埋まっていても、誰かがいる気はいつまでもするのだけれどもね。そんなことはとっくに学習し終えたよ。進歩のない頭だ。
嫌われるのが怖い。本音かね? 嘘だよ。白々しい。ちゃんとしたことをちゃんと伝えるのはまずい。まずすぎる。ダメージだ。痛みだ。受け止めてもらえないときの恐怖だ。やはり恐怖だ。ベタな話だね。うんざりする。
俺は凄くないといけない、と一日に十回は思う。俺は凄くない、と一日に二十回は思う。どうしようもないさね。
僕はいつでも否定されたがりだ。それでもね、否定されると泣くんだよ。気持ち悪い。