SARUZINI

オーバーニーソックスが流行ってるとかなんだとか言うけどさ、俺たちの信じてきたオーバーニーソックス、いわゆるニーソが実は、サイハイソックスだと知った俺*1。道理で町を行く人々、きちんと膝の上までしかないのか。やっぱさー、太ももの下までないと駄目だわ、俺としちゃぁさ? 何言ってんだお前。愛すべき友人と馬鹿言い合いながら、夕暮れ、暗闇、帰る。
そういえばさ、ゴスロリの、髪を腰まで伸ばしてる子がいてさ、その子が太もも下までのソックスはいてたのを思い出すよ。あれは良かった。心底欲情した。今となっちゃ、そこで何もできなかったちんけな俺の思い出だ。まだそういう服、買ってんのかな。少し前、町で見かけた気がしたのはゴスでもロリでもないあの子。秋は静かに冷めてゆく。時間もゆるりと過ぎ、変わらないのは俺だけ。いやいや、変わってんのかな、俺も。わからねぇけど、俺を取り巻く人々の、俺を見る目のなんと変わらないことよ。


転機が訪れているだろう。後二日。明後日、明々後日、その日々の過ぎるを持って、俺は決断を迫られることとなる。けれど、日々の合間合間、思い出さぬようにしようと思う。最後の日、思うことで全て絶望するようなら、何にも手元には要らぬよな。俺は欲張りだから、何もかもを欲しがって、何もかもに飽きる。飽きたらすぐ捨てちまうなんて、環境に悪いのかもな。
見えるもの、今見えるもの。聞こえるもの、今聞こえるもの。触れられるもの、今触れられるもの。全て大事なものだ。
君が、何にもお前らわかっていない、などと叫ぶとき、俺はちっとも君のことなんてわかりはしないよ。わかりあおうぜ。繋がろうぜ。俺は、俺の目前にいる全ての人々と、俺の喉と君らの耳使ってさ、繋がりたいわけだ。そこで何が見えますか。そこで何が聞こえますか。そこで、僕の何に、触れましたか。俺にはちっともわからねぇ。だからさ、問いかけたいんだよ。繋がって、直接、問いかけたい。
最終的にはさ、独りよがりで終わっちまうのか? そんなの嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。俺は薄ら笑いで、喜ぶんだ。誰にも俺の言葉など伝わっておらず、俺にも誰の言葉など伝わっていない。けれど、俺は、必死に喜ぶんだ。あぁ、糞が。そんなくだらない時間は過ごしたくねぇんだ! 繋がりを、欲している。寂しくて、たまらない。寂しいよ。
これは弱音か? それとも、心からの叫びとか言う奴か? やはり俺にはわからぬ。遠くから、ずうっと俺自身の声がするんだ。わからぬわからぬと、呻いている。これも弱音なのかね。俺は強くなくてはならなくて、俺は弱くなくてはならなくて。節度を守ることが重要だ。不可欠だ。節度を忘れちまえば、何の縛りもなく、死地へうれうれと向かっちまう。


世界は、俺の周りを飛び回る。世界を超えろ! 世界を変えろ! 君ら全てにその力があるように、僕にもその力が、きっと、ある。信じろ。嘘だね、ぼやく少年が昔いたけれど、そんな時代は忘れちまえ。
無理やりにでも、速度を上げる。フルスピードのもう少し先、歯車の焼き焦げるもう少し前。その速度で、ぶっちぎって、そうしないと、俺は、落ちちまう。地面の中に落ちちまう。適切な速度とは、光速の一歩手前のことさね。
あぁ、どうしていいか、まるでわからぬ。色々とさ、考えているつもりだったのに。二つか三つ、違うね、もっと多く三千数百ほどの意思が小さく小さく疑問を投げかける。俺は首をかしげている。かしげた首が、ころりと落ちて、そこからは何も出ずに、静かに肩の上へと返る。暗い夜道を怖くなくなった日、その瞬間がどうしてもわからぬのと同じことだ。
冷たいことばかりも言っていられぬから、ここらそこらで打ち止めだ。あとのことは、エンジンでも爆発した後に考えるよ。